条文

行政行為の取消し・撤回の事由に関する法律の規定に関するメモ

行政行為の取消し及び撤回は、解釈上制限される場合があるとしても、これを認める明示の法律の規定を必要としないとするのが通説的見解である。 しかし、実際上、法律においてその事由を定めるものが多く、乙部哲郎『行政行為の取消と撤回』(P390〜)にその例…

読みにくい条文の例

次の規定は、平成25年法律第53号により追加された総合特別区域法第22条の2の規定である。 (道路運送車両法の特例)第22条の2 指定地方公共団体が、第12条第2項第1号に規定する特定国際戦略事業として、農業経営改善自家用貨物自動車活用事業(国際戦略…

立入検査の規定における解釈規定

条例で立入検査の規定を置く場合に、あわせて法律の例にならって「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という解釈規定を置く例がみられる。 こうした規定を置く理由は、行政上の立入検査は、裁判官の令状なしにその権限を付与するものであり…

中国残留邦人等支援法に基づく支援給付の事務の委任

いつも興味深く拝見している「反則法制」において、おおさか政策法務研究会管理人さんが「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(以下「中国残留邦人等支援法」という。)に基づく支援給付の実施を委任する場合の規定の…

典型的なものを列挙する規定〜抗告訴訟の類型

次の規定は、抗告訴訟を定義している行政事件訴訟法第3条の規定である。 (抗告訴訟)第3条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力…

「準用」する理由

平成25年法律第72号により「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が改正され、生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手(以下「生活の本拠を共にする交際相…

号(下)

<事例3> たばこ税法(昭和59年法律第72号)(未納税引取)第13条 次の各号に規定する者が当該各号に掲げる製造たばこを保税地域から当該各号に掲げる場所に引き取ろうとする場合において、政令で定める手続により、その保税地域の所在地を所轄する税関長…

号(上)

幾つかの事項を列記する場合に用いる号は、「次に掲げる○○」として1つの号に1つの事項を列記したり、「次の各号に掲げる○○の区分の応じ当該各号に定める○○」として1つの号に2つの事項を列記したりする。 しかし、号の用いられ方は、それらに限られない。…

用語を定義するかしないか(下)

男女共同参画基本法のほかに「男女共同参画」という用語が使われている法律は、次の7本である。 少子化社会対策基本法 国家公務員制度改革基本法 特定非営利活動促進法 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 独立行政法人国立女性教育会館法 …

用語を定義するかしないか(上)

ある用語を用いる場合に、定義しなければいけないかどうか悩むことがある。なかには、同じ用語でも定義をしたり、しなかったりすることがある。 例えば、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」では、「子どもの貧困」や「子ども」について定義されていない…

同じ題名の複数の例規を引用している例

法令中に他の法令を引用する場合は、「その引用する法令の題名を掲げ、その下(横書きであれば、その右)にその法令の法令番号を括弧書きするのが原則である」(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P128))。 ところで、一部改正法令によくあるよう…

規制を行う場合の規定例〜動物愛護法の例

平成24年法律第79号により「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、一定の飼養施設を設置して動物の取扱業を行おうとする者を第2種動物取扱業者として届出義務を課すこととされた。 該当する規定は、次の改正後の法第24条の2である。 (第二種動物…

準用規定をその一部を除いて準用する場合

次のような準用規定があったとする。 第○条 第5条、第8条から第10条まで、第12条及び第13条の規定は、○○について準用する。 この規定を準用したいのだが、第12条の規定だけ準用したくない場合、どのようにすべきだろうか。 まず、次のように読み替えで対応…

目的規定〜日弁連行訴法第2次改正案に関する議論から

『判例時報(2159号)』に、平成24年2月13日に行われた「行政事件訴訟法第ニ次改正シンポジウム」の概要が記載されている。その中で、日本弁護士連合会による行訴法第二次改正案における目的規定についての議論に興味が引かれたので、それを取り上げる。その…

改正後の法令の題名に付された略称は改正前の法令の題名に及ぼすことができるか

法令の題名の改正が行われ、改正後の題名に略称が置かれた場合に、その略称を改正前の題名にも及ぼすことができるであろうか。 次のような例がある*1。 高齢者の医療の確保に関する法律施行令(平成19年政令第318号)(法第18条第1項に規定する政令で定める…

同じ題名の例規を複数引用している例

法令中に他の法令を引用する場合は、「その引用する法令の題名を掲げ、その下(横書きであれば、その右)にその法令の法令番号を括弧書きするのが原則である」(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P128))。 ところで、一部改正法令によくあるよう…

定義規定を項で書く場合と号で書く場合の基準

総則規定として置かれる定義規定の書き方は、項で書く場合、つまり「この条例において「○○」とは、……をいう。」とするものと、号で書く場合、つまり「この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。」という柱書きを書き…

人事院規則9−129附則第5項及び第6項の意味〜適用と準用の規定

平成24年5月1日に公布された人事院規則9−129−1により、人事院規則9−129が改正されているが、改正後の同規則附則第5項及び第6項は、少し見ただけでは、その意味がよく分からない規定である。そこで、これらの規定について触れてみることにする。 まず…

本則におかれる経過規定の例

法令の制定・改廃を行う場合、それにより新しい法秩序に円滑に移行するため、従来の秩序をある程度容認するとか、新しい秩序の設定に暫定的な特例を設けるとかする経過的な措置を定めることが多い(法制執務研究会編『新訂ワークブック法制執務』(P292)参照…

法令の名称の略称(その4)

このシリーズで今回は、改正法令以外の法令の略称の例を、2つ程取り上げる。 まず、消費者庁及び消費者委員会設置法附則第3項に規定されている次の例である。 消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年法律第48号)附 則3 政府は、この法律、消費者庁及…

「A」を書かなければいけないのに「B」を書いている例(下)

前回取り上げた文献には、次のような規定も記載されている。 (定員)第○条 児童福祉条例第4条第4号に規定する保育所の定員は、60人以上とする。ただし、次の各号に掲げる場合はこの限りでない。(1) 小規模保育所(60人以上の定員で設置することが困難であ…

「A」を書かなければいけないのに「B」を書いている例(上)

以前、条例審査を行った際、原課の案として、法律で条例に委任されている事項は技術的基準であるのに、住民の意見を聴くことを書いてきた例があった。このように、審査に持ち込まれるものには、「A」を書かなければいけないのに「B」を書いている例はよく…

地域主権改革一括法を受けた条例の規定内容〜目的規定を中心にして(下)

このシリーズの最後に、小泉祐一郎『地域主権改革一括法の解説』における児童福祉条例試案(前掲書(P293〜))を取り上げておくことにする。 条例試案における目的規定は、児童福祉法第1条の理念規定を参考としているが、その規定は、次のとおりである。 …

地域主権改革一括法を受けた条例の規定内容〜目的規定を中心にして(中)

小泉祐一郎『地域主権改革一括法の解説』では、自治体の道路条例において、地域の交通基盤の整備や歴史景観等を加えた目的規定とすることを提案しており、その試案における目的規定を次のようにしている。 (目的)第1条 この条例は、地域の交通基盤の整備…

地域主権改革一括法を受けた条例の規定内容〜目的規定を中心にして(上)

前回(2012年1月14日付け記事「出先機関の事務の一部の管轄区域を異なったものとすること」)取り上げた、小泉祐一郎『地域主権改革一括法の解説』は、各分野ごとの例規の整備方針等について記載している。 このなかで、どのような事項を条例事項とし、規則…

法令の名称の略称(その3)〜改正法令の附則にみられる例(2)

前回(「法令の名称の略称(その2)〜改正法令の附則にみられる例(1)」)に引き続き、改正法令の名称の略称の例を取り上げる。 <例1>日本年金機構法(平成19年法律第109号)附 則第35条 施行日の前日に旧組合の組合員であった者(施行日に厚生労働省…

法令の名称の略称(その2)〜改正法令の附則にみられる例(1)

改正法令の附則において、改正前後の法令の名称の略称が置かれることがあるが、この点について、田島信威『最新 法令の読解法(4訂版)』(P364)には、次のように記載されている。 改正前後の法令を指し示すためには、「新法」「旧法」という略称が用いられ…

項を「削除」とすることができない理由

2010年8月27日付け記事で取り上げた『政策条例のつくりかた』の中で、松下先生は、法制執務に関し、「なぜ『項』は単なる段落で、それゆえ『削除』とすることはできないだろうか」(P197)と疑問を述べられています。 私は、その理由は、もともと項には項番号…

法令の名称の略称

長い題名の法令を引用する場合に、その略称を置くことはよくあることである*1。 その略称をどのようなものにするかについては、明確なルールはないように感じている。 さらに、次の例のように、租税特別措置法という一の法律の中で、「投資信託及び投資法人…

目的規定〜公文書管理条例

『自治体法務研究(No.20)』に、公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)の制定を受けて、弁護士であり大学院教授である方が公文書管理に関するモデル条例案を提示されている。 私は、実際に弁護士等の学識経験者が条例の案文の形で執行…