施行日前に一定の行為をすることができる旨の経過規定

ある行為等について許可制を採ることとした場合、当該行為等を施行日にしたい者もいるであろう。そのため、法律では次のような経過規定を置くことがある。

第○条の許可の手続は、この法律の施行前においても行うことができる。

しかし、届出制の場合には、当該行為等を施行日にしたいこともあるだろうが、事前に届出をすることができる旨の経過規定は見たことがない。届出制の場合は、行政庁に到達すれば足りるため、あえて規定するまでもないと考えているのかもしれない。
そうすると、許可制を採った場合でも、自治体においては、許可の件数がどれ位あるかは予測できるだろうし、また、施行日に許可を行うことができることもあるだろうから、経過規定を置かないという選択ができることもあるだろう。
しかし、いずれの場合も、経過規定を置かなかった場合には、例えば施行日に許可をした扱いにするとか、施行日に届出があったことにするというように、少なからず作為的な扱いをする必要も出てきてしまうと思うので、それよりは、きちんと施行日前に一定の行為をすることができる旨の経過規定を置いた方がいいのではないかと思っている。
最近は、届出制の場合であっても、住民との協議を義務付けたり、景観法のように行政命令を予定している関係で一定期間着手制限をかけること(「届出制とその規制手法について(その3)」参照)で、一連の手続に時間がかかることがあり、そのような場合には、行為者は施行日よりかなり前に届出を行いたいという場合もあるであろうから、特に経過規定を置くべきだと思う。
その場合の経過規定としては、手続が複雑な場合には環境影響評価法附則第5条等のような例もあるが、通常は、次のような規定を置いた上で、それに付随した手続(行政命令等)があれば、それを行うことができる旨の規定を併せて置くことで足りるであろう。

第○条の規定による届出は、この条例の施行前においてもすることができる。