続・新旧対照表方式(8)〜再び改め文

これまで記載したことを踏まえて、改め文をどのようにするかについて記載して、このシリーズはとりあえず終わることとしたい。
まず、改め文を置く位置についてだが、「続・新旧対照表方式(6)〜別表の改正と改め文の位置」で記載したように新旧対照表の前に書くのが適当ではないかと思う。
そして、具体的にどのように書くかについてだが、現時点では鳥取県の方式が最も適当ではないかと感じているので、それをベースに考えることにする。その改め文は、「続・新旧対照表方式(4)〜改め文」でも記載したが、次のとおりである。

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
次の表の改正前の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動条項等」という。)に対応する同表の改正後の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動後条項等」という。)が存在する場合には、当該移動条項等を当該移動後条項等とし、移動条項等に対応する移動後条項等が存在しない場合には、当該移動条項等(以下「削除条項等」という。)を削り、移動後条項等に対応する移動条項等が存在しない場合には、当該移動後条項等(以下「追加条項等」という。)を加える。
次の表の改正前の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、削除条項等並びに様式及び別表並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正部分」という。)に対応する次の表の改正後の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、追加条項等並びに様式及び別表並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正後部分」という。)が存在する場合には、当該改正部分を当該改正後部分に改め、改正部分に対応する改正後部分が存在しない場合には、当該改正部分を削り、改正後部分に対応する改正部分が存在しない場合には、当該改正後部分を加える。
次の表の改正前の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正表」という。)に対応する次の表の改正後の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正後表」という。)が存在する場合には、当該改正表を当該改正後表に改め、改正表に対応する改正後表が存在しない場合には、当該改正表を削り、改正後表に対応する改正表が存在しない場合には、当該改正後表を加える。
次の表の改正前の欄中別表及び様式並びにこれらの細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動別表等」という。)に対応する次の表の改正後の欄中別表及び様式並びに細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動後別表等」という。)が存在する場合には、当該移動別表等を当該移動後別表等とし、移動別表等に対応する移動後別表等が存在しない場合には、当該移動別表等を削り、移動後別表等に対応する移動別表等が存在しない場合には、当該移動後別表等を加える。

鳥取県の例は複雑ではあるが、上記のすべての改正内容があるとは限らないので、実際にはもっと簡潔になる場合が多く、その点では鬱陶しさは、あまり感じないことが多いのではないだろうか。
しかし、修正した方がいいと思われる点が2点ある。
1点目は、「続・新旧対照表方式(7)〜附則」で記載したように、改正する規定を「改正規定」と考えるため、改め文の書き出しを「次の表に掲げる規定について……」とし、それに伴う所要の修正をしたらどうかということである。
2点目は、「移動条項等」といった改正前の規定に関する略称の部分である。この「移動条項等」という略称については、まず移動に関する改め文を書いているのでそのような略称を置いたのであろうが、「改正前…」「改正後…」というように統一した方が分かりやすいだろうし、このような略称としても問題はないだろう。
以上を踏まえて修正すると次のとおりになる*1

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
次の表に掲げる規定について、同表の改正前の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「改正前条項等」という。)に対応する同表の改正後の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「改正後条項等」という。)が存在する場合には、当該改正前条項等を当該改正後条項等とし、改正前条項等に対応する改正後条項等が存在しない場合には、当該改正前条項等(以下「削除条項等」という。)を削り、改正後条項等に対応する改正前条項等が存在しない場合には、当該改正後条項等(以下「追加条項等」という。)を加える。
次の表に掲げる規定(改正前条項等、改正後条項等、削除条項等及び追加条項等並びに別表及び様式を除く。)について、次の表の改正前の欄中下線が引かれた部分(以下「改正前部分」という。)に対応する同表の改正後の欄中下線が引かれた部分(以下「改正後部分」という。)が存在する場合には、当該改正前部分を当該改正後部分に改め、改正前部分に対応する改正後部分が存在しない場合には、当該改正前部分を削り、改正後部分に対応する改正前部分が存在しない場合には、当該改正後部分を加える。
次の表に掲げる規定について、同表の改正前の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正前表」という。)に対応する次の表の改正後の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正後表」という。)が存在する場合には、当該改正前表を当該改正後表に改め、改正前表に対応する改正後表が存在しない場合には、当該改正前表を削り、改正後表に対応する改正前表が存在しない場合には、当該改正後表を加える。
次の表に掲げる別表及び様式の規定について、次の表の改正前の欄中別表及び様式並びにこれらの細目(以下「別表等」という。)の表示に下線が引かれた別表等(以下「改正前別表等」という。)に対応する次の表の改正後の欄中別表等の表示に下線が引かれた別表等の細目(以下「改正後別表等」という。)が存在する場合には、当該改正前別表等を当該改正後別表等とし、改正前別表等に対応する改正後別表等が存在しない場合には、当該改正前別表等を削り、改正後別表等に対応する改正前別表等が存在しない場合には、当該改正後別表等を加える。

なお、これも「続・新旧対照表方式(4)〜改め文」で触れているが、春日部市では、次のような改め文としており、鳥取県のものより簡単なものとなっている。

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
(1) 次の表中、改正前の欄の条、項又は号(以下「改正前の条等」という。)の表示及びそれに対応する改正後の欄の条、項及び号(以下「改正後の条等」という。)の表示に下線が引かれた場合にあっては、当該改正前の条等を当該改正後の条等とする。
(2) 次の表中、改正前の条等に対応する改正後の条等が存在しない場合にあっては、当該改正前の条等を削る。
(3) 次の表中、改正後の条等に対応する改正前の条等が存在しない場合にあっては、当該改正後の条等を加える。
(4) 次の表中、改正前の欄の下線が引かれた字句をそれに対応する改正後の欄の下線が引かれた字句に改める。ただし、第1号に掲げる場合を除く。

春日部市では、改め文をこのようなものとするためと思われるが、削除又は追加される条等には下線を引かないこととしているのであるが、その部分に加え、移動する条等の条名等にも下線を引かないこととし、さらに号で書くことをやめることにすると、次のようにすることも考えられる。

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
次の表中、改正前の欄の下線が引かれた字句をそれに対応する改正後の欄の下線が引かれた字句に改める。
次の表中、改正前の欄の条、項又は号(以下「改正前の条等」という。)の表示とそれに対応する改正後の欄の条、項及び号(以下「改正後の条等」という。)の表示が異なる場合にあっては、当該改正前の条等を当該改正後の条等とする。
次の表中、改正前の条等に対応する改正後の条等が存在しない場合にあっては、当該改正前の条等を削る。
次の表中、改正後の条等に対応する改正前の条等が存在しない場合にあっては、当該改正後の条等を加える。

これだと字句を改正する改め文を先にすることができ、私としてはその方がしっくりするので、どうせなら、こんな感じにしたいところである。
しかし、通常の新旧対照表において下線が引かれる部分に下線を引かないこととすることのデメリットの方が大きい感じがする。
この他にも、例えば、出石稔「徹底比較!自治立法の動向を探る」『月間ガバナンスNo.64(2006.8)』には、鳥取県改め文について次のような記載がある。

鳥取県方式で使われている「場合にあっては」とか「場合は」という表現……は、ある事柄が起きるかどうか不確定な場合で、あらかじめ、その対応を準備しておくときに使われるものであり、条例等の条文にも、一般的に使われている。しかし、改正文として使用することは、いかがだろうか。改正文は意思決定の対象(条例の場合は議案)であるので、具体的に想定できるもののみを書くべきと思われる。「存在しない」ことは確実に起きていることなのだから、「存在しない部分について○○」などの表現が望ましいのではないか。

鳥取県の方式は、まず改め文をまとめて置き、次に新旧対照表で改正する規定を列記しており、例えば改め文がAとBという2種類のものであったとすると、ある改正規定に対応する改め文はAであってBではないというように、それを読む人が改め文と改正規定との対応関係を確認していくような形になっているため、改め文に「場合にあっては」というような言葉を使っても、私はあまり違和感を持っていない。
しかし、その辺も含めて、まだまだ改善していく部分はあるのだろうし、なかなか標準的なものができるには、時間がかかるのではないだろうか。

*1:太字は、修正箇所である。