許可等の基準の書き換え(下)

前回(「許可等の基準の書き換え(上)」)取り上げた条例の書き方は、条例に規定する地下水保全協定で定められる地下水の水質を保全するために必要な事項としては、第13条第1項各号及び第2項各号で定める許可基準と別な事項を横だし的に定めることは想定しているのだろうが、それ以上にその許可基準を強化することのみを想定しているのか、緩和することも想定しているのかははっきりしない*1
特定の場合に許可基準とは別の基準を横だし的に認めるときの書き方であれば、「……を含む」とせずに、次のように並列的に書いた方がすっきりする*2

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)
(道路管理者の基準適合義務等)
第10条 (略)
2・3 (略)
4 新設特定道路についての道路法第33条第1項及び第36条第2項の規定の適用については、これらの規定中「政令で定める基準」とあるのは「政令で定める基準及び高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第2条第2号に規定する移動等円滑化のために必要なものとして国土交通省令で定める基準」と、同法第33条第1項中「同条第1項」とあるのは「前条第1項」とする。

また、許可基準を強化する場合に、もとの基準に代えてその強化するものを基準とするときには、次の大気汚染防止法第3条第3項を参考にした書き方をすることが考えられる。

大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)
(排出基準)
第3条 ばい煙に係る排出基準は、ばい煙発生施設において発生するばい煙について、環境省令で定める。
2 (略)
3 環境大臣は、施設集合地域(いおう酸化物、ばいじん又は特定有害物質に係るばい煙発生施設が集合して設置されている地域をいう。)の全部又は一部の区域における当該ばい煙発生施設において発生し、大気中に排出されるこれらの物質により政令で定める限度をこえる大気の汚染が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、環境省令で、当該全部又は一部の区域を限り、その区域に新たに設置される当該ばい煙発生施設について、第1項の排出基準(次条第1項の規定により排出基準が定められた場合にあつては、その排出基準)にかえて適用すべき特別の排出基準を定めることができる。
4・5 (略)
第4条 都道府県は、当該都道府県の区域のうちに、その自然的、社会的条件から判断して、ばいじん又は有害物質に係る前条第1項又は第3項の排出基準によつては、人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが十分でないと認められる区域があるときは、その区域におけるばい煙発生施設において発生するこれらの物質について、政令で定めるところにより、条例で、同条第1項の排出基準にかえて適用すべき同項の排出基準で定める許容限度よりきびしい許容限度を定める排出基準を定めることができる。
2・3 (略)

前回取り上げた条例の書き方が一般的であるとはいえ、規定の趣旨を明確にする意味でも場面に応じていろいろ書き分けることを考えてもよいのではないだろうか。

*1:条例において地下水保全協定で定められる地下水の水質を保全するために必要な事項は、第30条第1項第3号で、第13条の許可基準である構造基準に反するものでないこととされているので、少なくともこの構造基準に限れば、それを強化することのみを想定しているように思える。

*2:同様な書き方をしている例として、景観法(平成16年法律第110号)第49条等がある。