「・」の用例〜子ども・若者育成支援推進法の例

7月8日付けで公布された子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)は、題名からも分かるように、次のとおり「子ども・若者」という形で「・」(中点)が使われている。

(目的)
第1条 この法律は、子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組(以下「子ども・若者育成支援」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるとともに、子ども・若者育成支援推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。

「・」の用法については、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P656)では次のように記載されている。

「・」……は、(1)……少数を漢字書きする際に少数点を示す場合*1、(2)……目次において章、節等に含まれる条の範囲を示す際にその含まれる条が2条だけのときにこれをつなぐ場合、(3)……外国の国名、人名等のつなぎを表す場合、(4)……2つの密接不可分な名詞を結ぶときのつなぎの場合等に用いられる。

この法律における用い方は、分類すると上記の(4)ということになるのであろう。しかし、例えば上記の「子ども・若者育成支援」のように「A・B○○」といった例はあっても、単純に「A・B」というように単純に2つの名詞を結んだだけの例というのは、初めて見る気がする。
ちなみに、この法律は、政府原案である「青少年総合対策推進法」で「青少年」としていたものを、衆議院において修正したものであるが、その理由として、修正案提出者は、次のように説明している。

今回の修正案では、この法律が乳幼児期から30代までを広く対象とするということで、育成と支援をともに推進するという目的を明確に示すために、「青少年」にかえまして「子ども・若者」という言葉を用いさせていただいた次第であります。
実質的に対象が、青少年と子ども・若者という言葉との間での違いはないわけでありますが、しかし、今先生御指摘のとおり、言葉の響きとしての伝わりが悪いということで、あえて、わかりやすいメッセージをお伝えしたいという考えに基づいて変更させていただいております。
これまで政府は、2次にわたりまして、青少年育成施策大綱におきまして、青少年をゼロ歳からおおむね30歳未満の者としてとらえた上で、雇用など特定の施策分野においては30代も対象として施策を推進してきたものと承知しております。
しかしながら、青少年という言葉の響きは、例えば、昨年成立をいたしました青少年インターネット環境整備法、これでは青少年を18歳未満の者と規定しております。こうした用語では、30代までも含めて必要な支援を行っていくという本法の趣旨が伝わりにくいのではないかと考えた次第でございます。
また、若者の抱える問題の背景には、幼少時の体験や環境が影響を与えていることも指摘されております。青少年という言葉の中に乳幼児まで含まれるというのは一般的な理解とは異なってしまうのではないかということも変更のポイントになりました。
さらに、青少年という語は、これまで長い期間にわたって使われてきただけに、言葉自体の発するメッセージ性という点では弱いということも考えたわけでございます。
繰り返しになりますが、政府におけるこの関連施策の実質的な対象年齢の範囲は、基本的には変わっておらないわけであります。政府において幼少期からの育成や30代までを含めた若者支援にしっかり取り組むという本法の趣旨を踏まえて、法律に基づく大綱において対象年齢を改めて整理され、これまで以上に、子どもから若者までの幅広い年齢層の育成及び支援に積極的に取り組んでいただくことを求めていきたいと考えております。(第171回国会衆議院青少年問題に関する特別委員会(平成21年6月18日)における江崎(洋)議員答弁)

「・」については、以前(2007年8月19日付け記事『「 」の用例』)少し記載したことがあるが、一般の公文書では非常にルーズに使われる用字の一つである。この法律でも、「青少年」という言葉が嫌なら、単純に「子ども及び若者」でもいいのではないかと思うのだが、どうしても「・」を使いたいという人がいて、そういうわけにはいかないということだろうか。
ただ、実は私も本来なら「・」を使うべきでないところで、他者の強い主張で用いたことがあるので、えらそうなことは言えないのだが。

*1:横書きの場合には、当てはまらない。