試験の名称を変更した場合の経過規定

平成21年4月22日に公布された「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律(平成21年法律第20号)」(衆法)は、あん摩マッサージ指圧師試験等の名称を、国家試験であることを明確にするため、あん摩マッサージ指圧師国家試験等に改めることとしている。
そして、所要の経過規定が置かれているが、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の改正及びそれに伴う経過規定は、次のとおりである*1

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案 
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の一部改正)
第1条 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)の一部を次のように改正する。
第2条第1項中「あん摩マツサージ指圧師試験、はり師試験又はきゆう師試験」を「あん摩マツサージ指圧師国家試験、はり師国家試験又はきゆう師国家試験」に改める。   
附 則 
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第2条 この法律の施行前に第1条の規定による改正前のあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の規定によりなされたあん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許若しくはきゅう師免許又はあん摩マッサージ指圧師試験、はり師試験若しくはきゅう師試験は、それぞれ、同条の規定による改正後の同法の規定によりなされたあん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許若しくはきゅう師免許又はあん摩マッサージ指圧師国家試験、はり師国家試験若しくはきゅう師国家試験とみなす。

私は、この経過規定をなぜこのような書き方としたのかよく分からないのである。
ちなみに、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」の関係規定は、次のとおりである。

改正後のあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
第1条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
第2条 免許は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することのできる者(この項の規定により文部科学大臣の認定した学校が大学である場合において、当該大学が同条第2項の規定により当該大学に入学させた者を含む。)で、3年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の認定した学校又は厚生労働大臣の認定した養成施設において解剖学、生理学、病理学、衛生学その他あん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師となるのに必要な知識及び技能を修得したものであつて、厚生労働大臣の行うあん摩マツサージ指圧師国家試験、はり師国家試験又はきゆう師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して、厚生労働大臣が、これを与える。
2〜10 (略)
第3条の3 免許は、試験に合格した者の申請により、あん摩マツサージ指圧師名簿、はり師名簿又はきゆう師名簿に登録することによつて行う。
2 (略)

例えば、あん摩マッサージ指圧師免許を取得するためには、該当する試験を受けなければいけないのであるが、その名称が変わったので、改正前の試験に合格して免許を取得している場合や、改正前の試験に合格したがまだ免許を取得しておらず、改正後にそのための申請を行おうとする場合のために、何らかの経過規定は必要になってくる。ただ、それは改正前の法律に基づく試験を改正後の法律に基づく試験とみなせば足りるのであり、それに加えて、その免許についてまで同様の経過規定を置く必要はないと思うのである。
ちなみに、類似の事例で看護師等の試験の名称が改められた際には、次のような経過規定が置かれている。

保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律(平成13年法律第153号)   
附 則
(旧法の規定による免許を受けた者)
第2条 この法律の施行の際現にこの法律による改正前の保健婦助産婦看護婦法(以下「旧法」という。)の規定による保健婦免許若しくは保健士の免許、助産婦免許、看護婦免許若しくは看護士の免許又は准看護婦免許若しくは准看護士の免許を受けている者は、この法律による改正後の保健師助産師看護師法(以下「新法」という。)の規定による保健師免許、助産師免許、看護師免許又は准看護師免許を受けた者とみなす。 
(旧法の規定による試験に合格した者)
第3条 旧法の規定による保健婦国家試験(保健士になるためのものを含む。附則第6条及び第7条において同じ。)、助産婦国家試験、看護婦国家試験(看護士になるためのものを含む。附則第6条及び第7条において同じ。)又は准看護婦試験(准看護士になるためのものを含む。附則第6条及び第7条において同じ。)に合格した者は、新法の規定による保健師国家試験、助産師国家試験、看護師国家試験又は准看護師試験に合格した者とみなす。

この「保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律」にも免許に関する経過規定は置かれているのだが、これは免許の名称も改正されているので、このような経過規定は必要になるだろう。
その意味で、今回の事例に関しては直接参考にはならないのだが、同種の経過規定を書く際の参考事例にはなるだろう。

*1:その他、歯科衛生士法、診療放射線技師法、歯科技工士法及び柔道整復師法についても、同様の改正等がなされている。