自治体における断続的労働に関する例規の規定(下)

前回(「自治体における断続的労働に関する例規の規定(上)」)の冒頭で触れた自治体の断続的労働に関する条例の規定は、次のようになっている。

職員の勤務時間、休暇等に関する条例
(正規の勤務時間以外の時間における勤務)
第9条 任命権者は、人事委員会の許可を受けて、第3条から第6条までに規定する勤務時間(以下「正規の勤務時間」という。)以外の時間において職員に設備等の保全、外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他の人事委員会規則で定める断続的な勤務をすることを命ずることができる。ただし、当該職員が育児短時間勤務職員等である場合にあっては、公務の運営に著しい支障が生ずると認められる場合として人事委員会規則で定める場合に限り、当該断続的な勤務をすることを命ずることができる。
2 (略)

そして、問題とされていた病院事業については、労働基準法別表第1の第13号の事業とするのが通常であり、そうすると、その労働基準監督機関は労働基準監督署となるので、この条例第9条第1項の「人事委員会の許可」をどのように考えるか問題となる。
一つの考え方としては、条例第9条第1項の許可は、労働基準法第41条第3号の許可とは別のものだという考え方である。つまり、病院事業の場合は、所轄の労働基準監督署の許可と人事委員会の許可の2つの許可が必要だと考えるのである。しかし、労働基準監督署の許可のほかに人事委員会の許可を求める必要性はあるのだろうか。
もう一つの考え方としては、自治体の事業所の場合、前回(「自治体における断続的労働に関する例規の規定(上)」)記載したように、都道府県労働局と人事委員会が協議して労働基準法別表第1のどの事業に当たるか当たらないか、すなわちどちらが労働基準監督機関となるかを決するため、この自治体の事業所は、すべて人事委員会が労働基準監督機関となっているのではないかということである。しかし、その可能性がどの程度あるのかということと併せ、将来的にもすべての事業所が人事委員会の所管となるわけではないので、立法論としては適当ではないであろう。
ちなみに、自治体によっては、次のような規定としているものがある。

(宿日直勤務)
第○条 任命権者は、人事委員会(労働基準法(昭和22年法律第49号)別表第1第1号から第10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業にあっては、労働基準監督署長)の許可を受けて、第2条、第3条第1項及び第2項並びに第5条に規定する正規の勤務時間以外の時間において職員に設備等の保全、外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他の人事委員会の承認を得て○○規則で定める断続的な勤務をすることを命ずることができる。ただし、当該職員が育児短時間勤務職員等である場合にあっては、公務運営に著しい支障が生ずると認められる場合として人事委員会の承認を得て○○規則で定める場合に限り、当該断続的な勤務をすることを命ずることができる。

この規定であれば、特別の問題はない。しかし、「人事委員会……の許可を受けて」の部分は、いわゆる「2度書き」(2009年9月25日付け記事「2度書き」参照)であり、自治体は一般に労働基準法の適用がある以上、あえて書く必要はないであろう。