非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて〜大阪高裁判決から(中)

今回は大阪高裁判決が、どのような判断基準で、どのような結論を出したのか触れることにする。
1 本件条例中の月額報酬制に関する規定の適法違法の判断基準
阪高裁判決は、以上のような考え方に基づき、本件条例中の月額報酬制に関する規定の適法違法の判断基準として、次のように述べる。

既に述べたように、委員等の非常勤職員について本件ただし書によって条例で特別の定めをするかどうかは、地方公共団体の議会が、……裁量的判断をすることによって決するものと解される。 
そして、……全国のほとんどの地方公共団体が各種委員について月額報酬制を半世紀以上継続して採用してきており、その点にはそれなりの経緯と理由があったと考えられる。 
しかし、当時から既に半世紀以上を経た今日では、多くの地方公共団体において財政的困難に直面し、首長等が法や条例で規定されている給与を一部カットする非常措置をとったり、職員の給与に減額措置をとるような状況に立ち至っていることは周知の事実である。また、一般にも、より適正、公正、透明で、説明可能な行政運営が強く求められる社会状況になっており、このような状況の下では、被控訴人が援用する法2条14項及び地方財政法4条などをもより強く意識する必要がある。 
そこで、現時点においては、非常勤の本件委員らについて月額報酬制を採用している本件規定に係る議会の判断が裁量の範囲を逸脱して違法でないかどうかは、このような社会情勢の大きな変化を前提としつつ、当該職務の内容・性質や勤務態様、地方の実情等に照らし、法203条の2第2項本文の日額報酬制の原則によらずに月額報酬制をとるのを相当とするような特別な事情があるかどうかを検討し、もって本件規定が同条項本文の原則に矛盾抵触して著しく妥当性を欠く状態になっているかどうか、そしてそのような状態が相当期間内に是正されていないといえるかどうかによってこれを決すべきものと考える。そして、それらが肯定される場合には、本件規定は、裁量の範囲を逸脱したものとして、法203条の2第2項に違反し違法、無効というべきである。(大阪高裁判決P29〜)

そして、控訴人の本件委員らの職責が重大であるため、月額制は許容されるのではないかという主張について、次のように述べて否定している。

行政委員会の委員の職務内容は法定されており、その内容、職責の重大さ等を前提とした上で、法は、各種行政委員会の委員のうち、常勤とすることができる者を定める一方で、多くの委員を非常勤としている。これは前記のような行政委員会の委員に任命される者の資質に着目し、これを生かして行政権を担うことが期待されるものの、その勤務の多くは非常勤で行うことが可能であり、原則としてそれで足りるとする考えによるものと解される。非常勤の行政委員会の委員につき、勤務の質及び量に相応する報酬を支給する必要はあるものの、その職責の重大さを強調して、勤務量等の実情を度外視して月額報酬制をとることを法が許容しているものとは解されない。(大阪高裁判決P33)

2 大阪高裁判決の結論
阪高裁判決は、1の判断基準を踏まえ、各委員について、次のように(1)常勤職員との勤務日数の割合、(2)その報酬を1日当たりに換算した場合に、国における非常勤の委員に対する1日当たりの報酬額の限度額である3万5,000円の何倍になるかを検討している。

  • 労働委員会:勤務日数の割合 11.4〜15.1%、国の報酬額との比較 2.22〜2.63倍
  • 収用委員会
    • 会長:勤務日数の割合 11.6%、国の報酬額との比較 2.88倍
    • 委員:勤務日数の割合 11.0%、国の報酬額との比較 2.73倍
  • 選挙管理委員会
    • 委員長:勤務日数の割合 24.7%、国の報酬額との比較 1.36倍
    • 委員:勤務日数の割合 (1か月当たり1.89日、国の報酬額との比較 3.02倍

そして、選挙管理委員会の委員長については、月額報酬制としても違法ではないとしているが、その他の委員については、月額報酬制とすることは違法としている。