いわゆる「議員歳費返納法」について

マスコミで「議員歳費返納法」とか「議員歳費自主返納法」とか言われている「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律」が、この6日に成立し、11日に公布された。
この法律は、附則に次の1項を加えることを内容とする法律である。

当分の間、平成22年7月分以降の歳費について、月の初日以外の日に議長、副議長若しくは議員となつた者又は月の末日以外の日に衆議院の解散以外の事由により議長、副議長若しくは議員でなくなつた者が、当該事由が生じた月分の歳費として受けた額から、その月の現日数を基礎として日割りによつて計算することとした場合(月の初日以外の日に議長又は副議長となつた者はその日の前日まで議員の歳費を受け、月の末日以外の日に議長又は副議長でなくなつた者はその日の翌日から議員の歳費を受けるものとして計算する。)にその月分の歳費として受けることとなる額を差し引いた額に相当する額の全部又は一部を国庫に返納する場合には、当該返納による国庫への寄附については、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第199条の2の規定は、適用しない。

この追加される規定は、議員が歳費を国庫へ返納する場合に、公職選挙法で規定されている公職の候補者等の寄附の禁止規定の適用はないとしているだけであるので、これを「議員歳費返納法」というのは、どうもしっくりこない。
ところで、この規定の書きぶりは、次の「特別職の職員の給与に関する法律」附則第4項の規定などを参考にしているように思われる。

4 当分の間、内閣総理大臣国務大臣内閣官房副長官、常勤の内閣総理大臣補佐官副大臣又は大臣政務官がこの法律の規定に基づいて支給された給与の一部に相当する額を国庫に返納する場合には、当該返納による国庫への寄附については、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第199条の2の規定は、適用しない。

この規定は、閣法である昭和61年法律第102号で追加されたものである。この法案が提出された背景としては、国会の会議録によると、昭和57年から昭和60年までの人事院勧告が完全実施されてこなかった中で、昭和61年の人事院勧告については、完全実施する法案が提出されたのだが、他方で、閣僚については、なお給与が高すぎるといった批判がなされていたという事情があることが窺える。
そうすると、この規定を加える法案を提出したのは、そうした批判に応えるためであり、閣僚の給与の一部を自主返納することをあらかじめ決めた上でのことではないかと思われる。既に閣僚は自主返納することを決めていたのだとすると、そのことを前提として、公職選挙法第199条の2の規定の適用関係だけ書いた規定を設けたというのは、それなりに納得できる書き方ではある。
しかし、今回の議員歳費の場合は、所定額を自主返納することについて、対象議員すべてが了解しているとは思えない。
そうすると、単に公職選挙法の特例を定めるような書き方ではなく、次のように、「○○の規定にかかわらず、〜することができる」というような書き方をするのが適当と思われる。

当分の間、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第199条の2の規定にかかわらず、月の初日以外の日(平成22年7月○日以降の日に限る。)に議長、副議長若しくは議員となつた者又は月の末日以外の日(平成22年7月○日以降の日に限る。)に衆議院の解散以外の事由により議長、副議長若しくは議員でなくなつた者は、当該事由が生じた月分の歳費として受けた額から、その月の現日数を基礎として日割りによつて計算することとした場合(月の初日以外の日に議長又は副議長となつた者はその日の前日まで議員の歳費を受け、月の末日以外の日に議長又は副議長でなくなつた者はその日の翌日から議員の歳費を受けるものとして計算する。)にその月分の歳費として受けることとなる額を差し引いた額に相当する額の全部又は一部を国庫に返納することによる国庫への寄附をすることができる。

このように書けば、「議員歳費返納法」といっても、違和感はなくなるだろう。