一部改正で「第○章中」と明記することについて

2011年1月28日付け記事「例規の立案で間違いやすい例(9)」は、一部改正で「第○章中」と書くべきところを書いていない例を取り上げたが、今回は、「第○章中」と書くべきではないのに書いている例を取り上げる。
それは、ある自治体における次の例である。

題名の次に次の目次及び章名を付する。
(目次略)
第1章 ○○
第3条を第5条とし、同条の前に次の1章及び章名を加える。   
第2章 ○○
第4条 (略)   
第3章 ○○ 
第1章中第2条を第3条とし、第1条の次に次の1条を加える。
第2条 (略)

この改正に関する新旧対照表は、次のようになるであろう。

第1章 ……(章名追加)
 第1条 ……第1条 ……
 第2条 ……(追加)
 第3条 ……第2条 ……
第2章 ……(章名追加)
 第4条 ……(追加)
 第5条 ……第3条 ……
第3章 ……(章名追加)
 (略)(略)
改正の内容が改正対象法令に溶け込むのは、同時であるとされているので、章名の追加を行う場合には、そもそも「第○章中」という表記をしない改正方法を考えるべきである。
さらに、「第○章中」と書くのは、条の移動を行う場合に、章の冒頭又は末尾にある条がどの章に属することになるのか明確でない場合に明記されるものである。
そうすると、今回の改正で、改正後の第5条の前に第2章と第3章の章名を加えているのであるから、第2条を繰り下げたからといって、同条が第3章になることはあり得ないので、「第1章中」と明記する必要はないと考えることもできるだろう。
なお、法令であれば、次のように第2条を繰り下げた後に第2章と第3章の章名の加えを行うのが一般的であろう。

題名の次に次の目次及び章名を付する。
(目次略)
第1章 ○○
第3条を第5条とし、第2条を第3条とし、同条の次に次の1章及び章名を加える。   
第2章 ○○
第4条 (略)   
第3章 ○○ 
第1条の次に次の1条を加える。
第2条 
(略)

このようにすれば、「第○章中」と書かなければいけないのかという疑問すら浮かばないであろう。