「A」を書かなければいけないのに「B」を書いている例(下)

前回取り上げた文献には、次のような規定も記載されている。

(定員)
第○条 児童福祉条例第4条第4号に規定する保育所の定員は、60人以上とする。ただし、次の各号に掲げる場合はこの限りでない。
(1) 小規模保育所(60人以上の定員で設置することが困難であることにやむを得ない理由があり、かつ、60人未満の定員で設置することが特に必要と知事が認めたものをいう。)にあっては、定員が20人以上であるもの
(2) 夜間保育所(夜間における保育を適正に実施するために必要な条件を備えているものと知事が認めたものをいう。)にあっては、定員が20人以上であるもの
(3) 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第3条第2項の認定を受ける場合であって、当該認定を受ける同項に規定する幼保連携施設を構成する幼稚園及び保育園の定員の合計数が60人以上のものにあっては、当該保育所の定員が10人以上であるもの

この規定は、柱書きでは各号で「場合」を定めることとしているのに、第1号と第2号は保育所を規定している。これは、第3号だけにとらわれて何となく「場合」としてしまっているのかもしれない。ただ、その第3号も、良い書きぶりとはあまり思えない。
この規定が書こうとしていることは、保育所の定員は原則として60人だが、特定の保育所は例外を認めるということなのであろう。そうすると、この規定は、ある程度大きく書き直す必要があるが、
ポイントになるのは、第3号をどのように書くかになってくる。「場合」ではなく、第1号や第2号と同様に「保育所」を規定するとすると、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」第3条第2項の認定を受けた施設は、同法第6条第2項で、同法第3条第1項の認定を受けた施設及び同条第3項の規定による公示がされた施設とともに「認定こども園」といっているから*1、その用語を使った方がすっきりする。
以上によると、次のような規定にすることが考えられる。

(定員)
第○条 児童福祉条例第4条第4号に規定する保育所の定員は、60人以上とする。
2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる保育所の定員は、当該各号に定める人数とする。
(1) 小規模保育所(60人以上の定員で設置することが困難であることにやむを得ない理由があり、かつ、60人未満の定員で設置することが特に必要と知事が認めたものをいう。) 20人以上
(2) 夜間保育所(夜間における保育を適正に実施するために必要な条件を備えているものと知事が認めたものをいう。) 20人以上
(3) 認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第6条第2項に規定する認定こども園をいう。)のうち、同法第3条第2項の認定に係るものを構成する保育所(当該認定こども園を構成する幼稚園及び保育所の定員の合計数が60人以上のものに限る。) 10人以上

*1:「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」第6条第2項は、「認定こども園(第3条第1項又は第2項の認定を受けた施設及び同条第3項の規定による公示がされた施設をいう。以下同じ。)の設置者は、その建物又は敷地の公衆の見やすい場所に、当該施設が認定こども園である旨の表示をしなければならない。」という規定である。