委任条例の規定の書き方

半鐘さん経由で知ったのですが、早速委任を受けて書く条例のことを考えて欲しい事例がありましたので、それを取り上げます。
「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号。以下厚生労働省の通知にならって「医療介護総合確保推進法」という。)」附則第14条に関連して、厚生労働省による条例参考例の中で次の規定が示されている。

(改正法附則第14条に規定する介護予防・日常生活支援総合事業等に関する経過措置)
第8条 法第115条の45第1項に規定する介護予防・日常生活支援総合事業については、介護予防及び生活支援の体制整備の必要性等に鑑み、その円滑な実施を図るため、平成27年4月1日から当該市長が定める日までの間は行わず、当該市長が定める日の翌日から行うものとする。
(2項以下略)

医療介護総合確保推進法附則第14条は、次のとおりである。

第14条 第3号施行日*1前に市町村が第3号新介護保険*2第115条の45第1項第1号イに規定する第1号訪問事業、同号ロに規定する第1号通所事業及び同号ハに規定する第1号生活支援事業を実施する者の確保が困難であることその他の事情により第3号施行日から同項に規定する介護予防・日常生活支援総合事業を行うことが困難であると認めてその旨を当該市町村の条例で定める場合にあっては、第3号施行日以後第3号施行日から平成29年3月31日までの間において当該市町村(以下この項、次項及び附則第30条において「特定市町村」という。)の当該条例で定める日までの間は、当該特定市町村が行う第3号新介護保険法の規定による地域支援事業については、第三号新介護保険法第115条の45第1項、第115条の45の2第2項、第115条の45の3(同条第1項の指定に係る部分を除く。)、第115条の45の4、第115条の45の7、第115条の45の8、第115条の46第1項(第1号介護予防支援事業に係る部分に限る。)、第115条の47第4項から第7項まで及び第9項、第122条の2、第123条第3項、第124条第3項、第126条第1項、第152条並びに第153条の規定は適用せず、第3号旧介護保険法第115条の45第1項(第1号及び第2号に係る部分に限る。)、第2項及び第7項、第115条の47第4項から第7項まで、第122条の2、第123条第3項、第124条第3項、第126条第1項、第152条並びに第153条の規定は、なおその効力を有する。
2 前項の場合において、特定市町村が行う介護保険の被保険者(当該特定市町村の区域内に所在する第3号新介護保険法第13条第1項に規定する住所地特例対象施設に入所し、又は入居する他の市町村が行う介護保険の同条第3項に規定する住所地特例適用被保険者を含む。)に対する第3号新介護保険法の規定による保険給付については、当該特定市町村の前項の条例で定める日までの間は、第3号新介護保険法第8条の2第1項、第53条第1項及び第2項並びに第54条第3項の規定は適用せず、第3号旧介護保険法第8条の2第1項、第2項及び第7項、第53条第1項及び第2項並びに第54条第3項の規定は、なおその効力を有する。
3〜5 (略)

この規定が条例に委任しているのは、次の2点である。
(1)ある事情により平成27年4月1日から介護予防・日常生活支援総合事業を行うことが困難である(と認める)旨
(2)改正後の介護保険法の規定の適用を猶予する期限の日
書き方で困ってしまうのは、(1)である。介護予防・日常生活支援総合事業を行うことが困難な「事情」を書けというのであれば簡単であるが、「困難である(と認める)旨」を書かなければいけないので、「条例で定める……は、……とする」という普通の書き方はできない。
他方、(2)は、その普通の書き方ができるので、次のように(1)と(2)とで項を分けて、(1)については、医療介護総合確保推進法第14条第1項をなぞった書き方をするのがよいのではないだろうか。

(医療介護総合確保推進法附則第14条第1項及び第2項の規定の適用)
第○条 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号。以下この条において「医療介護総合確保推進法」という。)第5条の規定による改正後の介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の45第1項に規定する介護予防・日常生活支援総合事業を円滑に実施するための体制を整備する必要があることにより、平成27年4月1日から当該事業を実施することが困難であると認めるため、同法の規定による地域支援事業については、次項に定める日までの間、医療介護総合確保推進法附則第14条第1項及び第2項の規定の適用があるものとする。
2 医療介護総合確保推進法附則第14条第1項に規定する条例で定める日は、平成○年○月○日とする。

条例参考例のように書くのであれば、法律では、ざっくりと「条例で定めるところにより」という書き方にすべきであろうが、条例への委任であるので、そのようには書き難いということであろうか。
いずれにしろ、条例参考例は、上記の(2)についてはともかく、(1)については「〜困難である(と認める)旨」を直接的には書いていないので、適切ではない。

*1:平成27年4月1日である。

*2:「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律第5条の規定による改正後の介護保険法」である。