施行期日の起算点を法律の成立の日とした例

第2回国会に提出された「郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出)(第39号)」の施行期日は、「この法律は、その成立の日から起算し、10日を経過した日から、これを施行する。」とされており、これについて次のような議論がされている。

<第2回国会衆議院通信委員会  昭和23年6月21日>
重井委員 ……なおもう一問お聽きしたいのですが、今の法律案の中に附則でございますが、「この法律は、その成立の日から起算し、10日を経過した日から、これを施行する。」とあるのでありますが、成立という言葉は内部行為である。いわゆる國民に知らせるというのではなくて、内部行為であると私ども考えるのであります。そこで公布というふうに改正すべきではないかと思うのであります。聞くところによりますと、法務廳の方でも今後法律施行の場合は、公布ということになるということを承つております。この点を伺いたいと思います。
佐藤(達)政府委員(法制長官) 重井委員のお尋ね、まことに適切なお尋ねでありまして、かような方向に向つて苦労をしておりますわれわれといたしまして、まことにありがたく感謝する次第であります。ただいまお話のありました通りに、成立の日というものは一般の目から見てわかりませんので、かような点を施行の日を押える、起算の源にすることは適当でないという考え方をわれわれはもつておるのであります。しかし法律の提案になりますまでの過程の間には、御承知のようにいろいろわれわれのままにならぬ過程をふんで、字句などもあまり意に満たないように形になるような場合もあるのでありますけれども、この場合につきましては、私どもの考えといたしましては、この法律の性質から申しまして、成立の日というものが非常にあいまいであるということから來る欠点はないというふうに考えております。何となれば、この十三條の條文自身が一種の授権と申しますか、総理大臣、逓信大臣が現実の料金をきめることについて、一種の法律外授権をしておるわけであります。從いまして、現実に料金がいくらと定まり、あるいは損害賠償の金額がいくらと定める。すなわち國民に最も緊密なる関係のある部面はどこで定まるかと申しますと、この法律自身ではないのでありまして、これに基いて定められます総理大臣、逓信大臣の命令というもので金額がはつきりきまつて、それによつてその金額が國民に適用になるわけであります。從いまして、現実の問題といたしましては、御承知のようにすでに総理廳令、逓信省令で外國郵便に関する省令がきまつておるわけであります。それが財政法が今度実施されます関係上、ここで根拠を一つ得たということと、それから新たにこの省令を改正いたしまして、料金なり損害賠償の金額を新たに定め、あるいは変更するという場合に、総理廳令あるいは逓信省令でそれがきめられるということになるわけであります。結論におきまして、われわれ國民として直接これの適用を受けますのは、その省令が適用になる。そこで問題はその省令の施行期日がはつきりきまつておれば、國民としては何ら心配するところはないという性質の法律であります。ゆえにわれわれはむきになつて向うにどうというところまではやりません。この意味でこの法案に石する限りにおいては、私の申し述べましたような見地から何ら弊害はないということを確信をもつております、ただ一般の問題として重井委員仰せの通り、われわれの方といたしましては、この成立の日というものを極力避けようというわけで公布の日を起算点とする。あるいは現実に何月何日と法律で押えていくか、とにかくはつきりした方法をとることが正しいというようなわけで、國会の両法政部の当局と緊密な連繋をとりまして、場合によつては法規委員会がひとつ勧告でもしていただいたならばよくはないか。もつと権威のある努力をしていただいたならばよくはないかというので、努力いたしておるようなわけでありまして、今のようなお言葉を伺つて非常に心強く感じておる次第であります。

法制長官の答弁を見ると、法律を一定の猶予期間を置いて施行する場合の起算点をその成立の日とするのが慣例であったように思われる。
言うまでもないが、現在、その起算点は公布の日である。