条項ずれした条の引用と罰則

kei-zuさん経由

条文の一部に間違いが… 静岡県風営法条例、修正へ
昨年12月に制定され、今年6月23日施行の改正県風営法施行条例の条文の一部に誤りが見つかり、静岡県は修正のため今月18日開会の県議会臨時会に同条例改正案を提出することが16日、関係者への取材で分かった。
同条例を所管する県警によると、条文4カ所に、引用条文の番号表記がずれる不備があった。深夜酒類飲食店の営業禁止地域に関する条文では、「2条1項1号に定める地域」と規定すべき部分が、「3条1項1号―」とされていた。
修正されないままだと「深夜の酒類飲食店営業は県内全域で禁止」などと改正条例の本来の趣旨とは異なる規定になってしまうため、施行日よりも前に正しい条文に差し替える必要に迫られた。
改正条例の条文作成時、一部条項を削除したのに伴う修正を失念したのが原因という。県警担当者が改めて改正条例を精査し、誤りを見つけた。臨時会で可決されれば、当初予定通りの日程で施行される。
風営法施行条例の改正は、クラブなどダンス営業の規制緩和を規定した改正風営法に伴う対応。一部規定については都道府県条例で具体的な制限を定めるとされている。
静岡新聞5月17日(火)8時8分配信

罰則に関係する規定で引用している条に条項ずれがあった際、その引用を修正していなかった事例だと思われるが、伊藤栄樹ほか『罰則のはなし(2版)』(P23〜)に同様の事例が紹介されている。
それは、元検事総長である同氏が法務省刑事局刑事課長当時、ある地方検察庁で豚の密飼養ケースを検挙した事例である。当時の「へい獣処理場等に関する法律」は第9条第1項で知事が指定する区域で豚等を飼養しようとする者は知事の許可を受けなければならないとされ、同法第10条第3号で「前条第1項に違反した者」に対しては、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金を課することとしていた。しかし、昭和37年の同法の改正時に第9条と第10条の間に第9条の2が追加されたが、第10条の改正が失念されていた。この場合に同氏は、地方検察庁からの照会に、次の理由から、「前条第1項の規定に違反した者」と規定している第10条第3号の規定は、第9条第1項の許可を受けないで豚を飼養した者を処罰するのに有効と解釈することに疑問があるので、不起訴処分とするほかないと回答したとのことである。

法律の沿革をたどってみれば、第10条第3号の規定は、第9条第1項の規定に違反した者を処罰しようとした規定であることがわかってはくるものの、刑罰を課することについては、わが憲法上の大原則として、罪刑法定主義というのがある。法律の明文なしに人を処罰することはできないし、また、罰則を勝手に類推解釈したり、拡張解釈することはできない。

ちなみに、同法の主管省であった厚生省は、昭和42年になって、同省所管の全く別の法律が改正される際、その附則でこっそり改正したとのことである。