犯罪を申告させる制度

次の規定は、「東京都暴力団排除条例」の規定である。

(勧告)
第27条 公安委員会は、第24条又は第25条の規定に違反する行為があると認める場合には、当該行為を行った者に対し、第24条又は第25条の規定に違反する行為が行われることを防止するために必要な措置をとるよう勧告をすることができる。
(適用除外)
第28条 第24条第3項又は第25条第2項の規定に違反する行為を行った者が、前条の規定により公安委員会が勧告を行う前に、公安委員会に対し、当該行為に係る事実の報告又は資料の提出を行い、かつ、将来にわたってそれぞれ違反する行為の態様に応じて第24条第3項又は第25条第2項の規定に違反する行為を行わない旨の書面を提出した場合には、前条の規定を適用しない。

この第28条の規定に関し、櫻井敬子『行政法講座2』(P106)には、次のように記載されている。

これは、行政手法としては、独占禁止法におけるリーニエンシー(課徴金減免制度)と発想を共通にするものであり、現代的な実効性確保の手段を条例レベルで工夫したものとして評価できる。東京都の「条例力」の高さを窺わせる一例といえる。

この第28条の規定の意味は、違反行為を行った者にその申告をさせることにより、その行為の発見を容易にするという意図のほか、警視庁「東京都暴力団排除条例Q&A」には、「適用除外の手続が完了となった場合には、条例上の禁止行為違反として責任を問われることはありませんので、是非ともこの制度を活用して、暴力団との関係遮断を図ってください。」と記載されており、そうした行為の誘因とすることも意図しているのであろう。
しかし、法技術的には、「勧告」は所詮行政指導であり、第28条に規定しているような場合には、この規定がなくとも勧告をしなくてもいいわけであり、アナウンス効果を期待する程度のものに過ぎないのではないかと感じる。