理屈先行の制度設計

平成14年の地方自治法改正により住民訴訟制度が変更された後、住民訴訟の前提となっている地方公共団体の有する損害賠償請求権を放棄するという事態が生じたことにつき、櫻井敬子『行政法講座2』(P230〜)には、次のように記載されている。

……住民訴訟が「今後とも健全な成長を続けることができるように、一部に剪定の鋏を入れて枝ぶりを正した」はずの改正法のもとで、制度を根底から揺るがすモラルハザードそのものといってよい債権放棄議決が相次ぎ、結果として、それが最高裁判決により正当化されることで、住民訴訟制度は癒しがたい大きな傷を負ってしまったということになろうか。翻って考えるならば、代位請求という住民訴訟の基本構造はそのまま維持したうえで首長の責任に上限を設ける等、旧制度の延長上に改善策を施す素朴な法改正のほうがどれほどましであったかわからない。しかし、今となっては文字通り「後の祭り」であり、理屈先行の制度改正が空振りに終わっただけでなく、想定外の事態を招いた具体例として、関係者は胸に深く刻むべきであろう。

上記の事態が結果として制度改正を行ったことによって生じたとしても、制度改正自体が間違った方向のものであったとは、私には思えない。
しかし、私自身も、良かれと思って創った制度が実態にあまり合っていなかったといった経験はある。そういった意味で櫻井教授の記載にある、理屈先行の制度改正が時として適切でない事態を生じることがあるということについては、例規審査を行う者は肝に銘じて置かなければいけないのだろう。