公党の代表の二重国籍問題

蓮舫代表の戸籍公表宣言で民進党分裂のカウントダウンが始まった!? 有田芳生氏vs原口一博氏…あの山口二郎法政大教授も参戦
民進党蓮舫代表が台湾籍と日本国籍の「二重国籍」問題をめぐり、日本国籍の選択宣言をした証明として戸籍謄本を公開する意向を示したことが、党内外で波紋を広げている。蓮舫氏の判断には「排外主義に屈する」などと反発があがり、謄本の公開を求めた同僚議員を攻撃する動きすら出ているのだ。首相を目指す野党第一党の党首が国籍の説明責任を果たすのは当然だが、公開の是非をめぐり党内の分裂が顕在化する皮肉な事態となっている。
「戸籍を公開せよとツイッターで書いた民進党の国会議員は誰だ。黙せずに『うん』とか『すん』とか言えよ。安倍晋三政権が窮地にある局面で、『敵』に塩を送っている」
民進党有田芳生参院議員は11日のツイッターで、公開を促した同僚議員を批判した。有田氏は「公表を求めることは、社会的・歴史的な『いじめ』で間違っている。長年にわたる被差別部落問題などの闘いへの逆行だ」とも書き込んだ。
有田氏の念頭には、ツイッターで国籍問題解決を求めた原口一博総務相今井雅人衆院議員があったとみられる。原口氏は9日、「どの国に生まれたかはどうしようもないこと。しかし公人」と書き込んだ。今井氏も「この問題をうやむやにしてきたから、党はピリッとしない」と指摘した。
そもそも今回蓮舫氏が決断したのは、これまで国籍問題の説明が二転三転したうえ、事実関係の説明が公的書類抜きの記者会見だったことも踏まえ、首相を目指す立場の公人として国民の信頼性を取り戻すための第一歩だったはずだ。
原口氏は12日、早速ツイッターで有田氏らに反論し「蓮舫氏は説明責任を徹底するために決断したのだと思う。議員が果たさなければならないことと一般の方と混同して議論している人も見られる」と指摘した。
議論は場外戦にも発展した。山口二郎法政大教授は11日のツイッターで「これは絶対に譲ってはならない一線だ。公的な活動、発言をするときに、自分は真正な日本人であることをいちいち挙証しなければならないなんて全体主義国家だ」と公開の判断を批判した。
これに対し、二重国籍問題を追及してきた徳島文理大の八幡和郎教授は11日のフェイスブックで「生まれてから現在に至るまでの国籍の異動について正確な情報を公開せずに、政治家であることを許す国が世界中にあるとは思わない」と反論した。
産経ニュース2017年7月12日配信

上記の問題を、法的にどのように考えるべきなのか、法律の規定を確認してみることにする。
国会議員は、日本国民であることが必要であるが(公職選挙法第10条第1項、国会法第109条)、日本国民であることの要件は、国籍法が定めている。ちなみに、国籍法の第1条と第2条の規定は、次のとおりである。

(この法律の目的)
第1条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
(出生による国籍の取得)
第2条 子は、次の場合には、日本国民とする。
(1) 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
(2) 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
(3) 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

一般的に日本国民であることの要件は、日本国籍を有することと考えられていると思うが、国籍法上、そのことを明記した規定はない。法律全体の趣旨からそのように考えることになるのだろう。
ところで、蓮舫氏の国籍に関わる問題は、上記記事のとおり二重国籍問題と言われているが、二重国籍の者について、国籍法は次の規定を置いている。

(国籍の選択)
第14条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が20歳に達する以前であるときは22歳に達するまでに、その時が20歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
第15条  法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第1項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。
2 (略)
3 前2項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から1月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつてその期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選択をすることができるに至つた時から2週間以内にこれをしたときは、この限りでない。
第16条  選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
2〜5 (略)

国籍法第14条第1項の表現からすると、二重国籍の者も、日本国籍を有しているのであれば日本人であることに疑いはない。
そうすると、首相となる者の国籍がどうであるべきかということは議論があるところかもしれないが、我が国は議院内閣制をとる以上、それも国会で議論すべきことであって、ましてや上記記事の「首相を目指す野党第一党の党首が国籍の説明責任を果たすのは当然」という記述はどうかと感じるところである。
また、「生まれてから現在に至るまでの国籍の異動について正確な情報を公開せずに、政治家であることを許す国が世界中にあるとは思わない」という意見については、立法的な措置により解決すべきことだろう。