規則で権利義務に関する事項を定めることの可否

私自身は直接確認していないのだが、半鐘さんやkei-zuさんが取り上げておられる、一部で、自治体の規則について定める地方自治法第15条に、政令に関する内閣法第11条や省令に関する国家行政組織法第12条第3項に相当する規定がないことから、規則に権利義務に関する規定を設けることができると主張されていることについて、お二人とも地方自治法第14条第2項が「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」と規定していることから、否定されている。
私も、お二人の考えに全面的に同意するのであるが、地方自治法の規定を見ていると、気になる規定がある。次の規定は、同法第15条の規定である。

第15条 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
2 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

気になるのは、第15条第2項の規定である。
第15条は、第一次地方分権前と何ら変わっていないのであるが、分権前は、機関委任事務という自治体の長の事務があり、規則は機関委任事務を規律するために制定していた側面もあったので*1、上記のような規定でも特段違和感はない。
しかし、分権後は、自治体が扱う事務は全て自治体自体の事務となり、権利義務に関する事項は条例事項とされたのであれば、原則として規則で権利義務に関する事項を定めることができない以上、規則で罰則を定めることも一般的には想定できないように思われる。逆に、第15条第2項があることだけを見ると、規則で権利義務に関することを規定できることが前提となっていると考えられないわけでもない。
したがって、第一次地方分権時に、第15条第2項は、削除するか、第14条第2項を削除した上で内閣法第11条や国家行政組織法第12条第3項と同様に次のような規定にすることとしてもよかったように感じられるのである。

規則には、法律の委任がなければ、法令に特別の定めがあるものを除くほか、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは権利を制限する規定を設けることができない。

<追記>(2017.8.18)
規則事項とされている庁舎管理に関する事項は、もちろん法律の委任事項ではないのですが、その庁舎管理規則に違反する事項について、須藤陽子「地方自治法における過料」『行政法研究第11号』(P13〜)には過料を科すことができるとするような記述があります。
しかし、私は、庁舎管理規則には過料規定を設けることは適切でないと考えています。ただ、現時点でその理由を明確に示すことができないので、今後整理ができた時点で改めて触れさせていただくこととします。

*1:鈴木庸夫『自治体法務改革の理論』(P3)は、「もともと規則は機関委任事務体制を支える法形式として、条例制定権のらち外で、その主要な役割を果たしてきた」とする。