職員定数条例

自治体における常勤の職員の定数は、地方自治法第172条第3項*1等の規定により条例事項とされている。
次の条例は、某県の職員定数条例である。

○○県職員定数条例
(定義)
第1条 この条例で「職員」とは、知事、議会、教育委員会選挙管理委員会、人事委員会、監査委員及び労働委員会の各事務部局並びに教育委員会の所管に属する学校以外の教育機関に常時勤務する地方公務員(特別職の者並びに地方公務員法(昭和25年法律第261号)第22条第2項及び地方公務員の育児休業等に関する法律(平成3年法律第110号)第6条第1項の規定により臨時的に任用される者を除く。)をいう。
(職員の定数)
第2条 職員の定数は、次の各号に定めるとおりとする。
(1) 知事の事務部局の職員
イ 一般職員(ロに掲げる職員を除く。) ○○人
ロ 病院事業会計で給与を支弁される職員 ○○人
(2)〜(7) (略)
2 次に掲げる職員は、前項各号の定数に含まないものとする。
(1) 休職中の職員
(2) 自己啓発等休業中の職員
(3) 配偶者同行休業中の職員
(4) 育児休業中の職員
(5) 他の地方公共団体に派遣された職員
(6) 県行政の運営上職員を派遣することが必要と認められる公共的団体の業務に専ら従事する職員
3 前項各号に掲げる職員が復職し、又は復帰した場合において、職員数が第1項各号の定数を超えることとなるときは、その超えることとなる職員を、1年を超えない期間に限り、当該定数の外に置くことができる。
(職員定数の配分)
第3条 前条第1項各号に定める職員の定数の当該事務部局等内の配分は、それぞれ知事、議長、教育委員会選挙管理委員会、人事委員会、監査委員又は労働委員会が定める。

かつて職員定数条例について条例準則があったかどうかは記憶がないが、このように第1条で職員の定義規定を置いている例が散見される。
しかし、上記の第2条第2項のような形で、一定の職員を定数外とする規定を置くのであれば、定義規定を置く意味はない。
次の条例は、他の某県の職員定数条例である。

△△県職員定数条例
(定義)
第1条 この条例で職員とは、知事、公営企業管理者、議会、選挙管理委員会、監査委員、人事委員会、教育委員会教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関労働委員会及び神奈川海区漁業調整委員会の事務部局に常時勤務する地方公務員(副知事、教育長及び2箇月以内の期間を定めて雇ようされる者を除く。)をいう。
(職員の定数)
第2条 職員の定数は、次に掲げるとおりとする。
  (表略)
2 職員のうち、他の地方公共団体に派遣されている者、育児休業をしている者、休職者等であつて長期にわたり職務に従事しないものについては、任命権者が必要と認める場合に限り、前項に規定する定数の外に置くことができる。
3 前項の規定により第1項に規定する定数の外に置かれることとなつた職員が職務に復帰し、又は復職した場合において、職員の員数が同項に規定する定数を超えるときであつて、任命権者が必要と認めるときは、その定数を超える員数の職員を1年を超えない期間に限り、定数の外に置くことができる。
(職員の定数の配分)
第3条 各事務部局に置かれる職員の各内部部局及び各附属機関別の定数は、前条に掲げる当該事務部局の定数の範囲内において、それぞれ知事、公営企業管理者、議会、選挙管理委員会、監査委員、人事委員会、教育委員会労働委員会又は△△海区漁業調整委員会が定める。

この条例の一定の職員を定数外とする規定(第2条第2項及び第3項)は、「できる」規定となっているので、定義規定を置くことについて、おかしいという感じはないのだが、やはりあまり意味があるとは思えない。
かつて職員定数条例について条例準則があったかどうかはよく分からないが、第1条が定義規定であっても、かつての職員定数条例には一定の職員を定数外とする規定はなかったと思うので、それなら違和感はないのだが、当該規定を置くようになると違和感を生じるようになる。
次の法律は、国の職員定数を定める法律であるが、基本的には、この法律のように書くのが適当と思う。

行政機関の職員の定員に関する法律
(定員の総数の最高限度)
第1条 内閣の機関(内閣官房及び内閣法制局をいう。以下同じ。)、内閣府及び各省の所掌事務を遂行するために恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤の職員の定員の総数の最高限度は、33万1,984人とする。
2 次に掲げる職員は、前項の職員に含まないものとする。
(1) 国家公務員法 (昭和22年法律第120号)第2条第3項第1号 、第2号及び第4号から第7号の3までに掲げる職員並びに同項第9号に掲げる職員のうち常勤の職員
(2) 宮内庁長官侍従長東宮大夫、式部官長及び侍従次長
(3) 自衛官
(4) 国際平和協力隊の隊員
内閣府、各省等の定員)
第2条 内閣の機関、内閣府及び各省の前条第1項の定員は、それぞれ政令で定める。

上記の法律を参考にしていると思われるのが、次の某県の職員定数条例である。

××県職員定数条例
(目的)
第1条 この条例は、常勤の一般職に属する地方公務員(以下「職員」という。)の定数を定めることを目的とする。
(職員の定数)
第2条 次に掲げる機関の事務を補助する職員の定数は、当該各号に定めるところによる。
(1) 議会 66人
(2) 知事 6,730人
(3)〜(10) (略)
2 前項に定める定数のほか、次に掲げる職員の定数は、任命権者が必要と認める範囲内において定めることができる。
(1) 地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17第1項(第292条において準用する場合を含む。)の規定により、他の地方公共団体に派遣し、又は他の地方公共団体から派遣されている職員
(2) 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条第2項又は職員の分限に関する条例(昭和26年××県条例第51号)第2条の規定により、休職を命ぜられている職員
(3) 地方公務員法第55条の2第1項ただし書の規定により、任命権者の許可を受けて、職員団体の業務に専ら従事する職員
(4) 地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)第6条第1項ただし書の規定により、公営企業管理者の許可を受けて、労働組合の業務に専ら従事する職員
(5) 地方公務員の育児休業等に関する法律(平成3年法律第110号)第2条第1項の規定により、育児休業をしている職員
(6) 外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員の処遇等に関する条例(昭和63年××県条例第1号)第2条第1項の規定により、外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員
(7) 公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平成13年××県条例第72号)第2条第1項の規定により公益的法人等に派遣される職員
(8) 職員の自己啓発等休業に関する条例(平成23年××県条例第10号)第2条の規定により、自己啓発等休業をしている職員
(9) 職員の配偶者同行休業に関する条例(平成26年××県条例第37号)第2条の規定により、配偶者同行休業をしている職員
(職員の定数の配分)
第3条 前条に規定する職員の定数の当該事務部局内における配分については、法令に別段の定めがあるものの外、当該機関の長が定める。

よりオーソドックスにするのであれば、第1条は、地方自治法第172条第3項等の法律の根拠規定を引いて、趣旨規定とするのだろう。

*1:地方自治法第172条第3項は、「第1項の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時又は非常勤の職については、この限りでない。」という規定である。