選挙管理委員会の啓発等

選管職員、過労運転で死亡事故か 衆院選前の1カ月間休日ゼロ 川西市役所を捜索 兵庫県
衆院選の投開票日前日の21日に兵庫県川西市選挙管理委員会に所属する職員の男(51)が勤務中に起こした死亡事故に絡み、兵庫県警川西署が自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで、勤務先の川西市役所を家宅捜索したことが26日、県警への取材で分かった。
男は1カ月以上も休まず勤務しており、県警は過労運転の可能性も視野に捜査を進めている。
事故は21日午後4時45分ごろ発生。市選管事務局主幹の男が公用車で片側2車線の直線道路を走行中、軽乗用車と正面衝突。軽乗用車を運転していた大阪市東淀川区の女性(66)が死亡し、同乗の女性(59)が大けがをした。県警は同法違反容疑で男を現行犯逮捕した。
市選管によると、男は9月19日以降、1日も休みがなく、残業時間は100時間を超えていた。事故原因を特定するため、県警は市役所を25日に捜索。男の勤務状況に関する資料を押収し、当時の男の健康状態などを調べている。
産経新聞 2017年10月26日配信

あるセミナーのパネルディスカッションでは、地方公務員は疲弊しているということが共通認識のような形で語られていたが、上記記事の事例は、それを証明する最たるものであるように思われる。
選挙事務は、投票率向上策などといって事務が増える一方で、見直すという風潮はない。投票率向上策については、特に国政選挙においては、通常の生活をしている人であれば、その報道等に鑑みると投票日がいつか知らないということはほとんど考えられない。したがって、投票率は候補者の特性に左右されると思うのだが、選挙管理委員会においても投票日の周知を目的とした啓発活動を盛んに行っているところもあり、大きな負担になっているのではないかと思う。
では、こうした啓発活動が選挙管理委員会の行わなければいけない事務なのかどうかであるが、選挙に関する啓発については、公職選挙法第6条第1項が次のように規定している。

総務大臣中央選挙管理会参議院合同選挙区選挙管理委員会都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙が公明かつ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない。

投票日の周知は、「その他選挙に関し必要と認める事項」には含まれるだろうが、条文からすると、選挙管理委員会による啓発は、いわゆる「明るい選挙」の推進に係るものを主に念頭に置いているのであり、現在の選挙に関する啓発のウエイトのかけ方は、法制度とはかなりずれているものとなっている。
いずれにしろ、選挙管理委員会の本来の事務は、選挙事務の管理であるから(公職選挙法第5条)、主たる業務以外の業務により本来行うべき業務がおろそかになるようでは本末転倒だろう。
ちなみに1998年(平成10年)6月から投票時間が2時間延長され、午後8時までとなり、それから開票事務を行うことになるため、特に国政選挙では選挙制度が複雑になっていることもあり深夜に及ぶため、その負担もばかにならないと思う。2003年(平成15年)12月から期日前投票が行われるようになったのであるから、投票日の投票時間を午後8時までにすることによる効果はあまり考えられない。
事務改善ということを考えるのであれば、開票を投票日の翌日にするという選択肢もある。次の規定は、公職選挙法第6条第2項の規定である。

中央選挙管理会参議院合同選挙区選挙管理委員会都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙の結果を選挙人に対して速やかに知らせるように努めなければならない。

「速やかに」であるから、開票結果の周知を翌日としても、行政サービスの観点からはともかく、違法ということはないだろう。