町村議会のあり方に関する研究会報告書

3月26日、総務省に設置された「町村議会のあり方に関する研究会」の報告書が公表された。報告書は、持続可能な議会の実現を目的として、小規模市町村を対象に、現行議会のあり方を維持できることを前提に、「集中専門型」と「多数参画型」という新しい2つの議会のあり方を条例で自由に選択可能とする制度を提言している。
「集中専門型」は、少数の専業的議員による議会構成とし、豊富な活動を想定する一方、生活給を保証する水準の十分な議員報酬を支給することとしている。つまり、現行議会よりも人数を絞り込み、議員報酬を増額することを想定している。
しかし、報告書によると、議員定数については、人口1,000未満の市町村における平均が約7人、1,000以上10,000未満の市町村における平均が約10人と既に少数であるのに対し、議員報酬は、人口1,000以上10,000未満の市町村においては200,000円を下回っていることからすると、上記の想定が果たして現実的だろうか疑問が生じてくる。
また、「集中専門型」では、多様な民意を反映させるという観点等から「議会参画員」を設けることとしている。議会参画員は、重要な議案について議員とともに議論するが議決権はなく、くじその他の作為が加わらない方法で選定されることをイメージされている。選任手続だけを見ると、裁判員制度を参考にしたような感じがするが、議会はそもそも民意を反映しなければいけないのに、その構成員である議員にはむしろ専門性を期待することになり、議会の性格が大きく変わるのではないかと感じる。
「多数選択型」は、多数の非専業的議員による議会構成とし、契約の締結などを議決事件から除外することなどによって議員の仕事量・負担を軽減し、議員報酬は、それに見合った副収入的水準とすることとしている。これは、アメリカ(ニューイングランド地方)におけるタウンミーティングやスイスの住民総会の例を参考にして、町村総会を現実的に成立させる方法として考えられたようであるが、果たして我が国になじむだろうかというのが率直な印象である。
なお、報告書では、議員を確保するために、公務員が議員になりやすい方策も提示されている。その一つが、「集中専門型」で提言されている公務員が立候補により退職した場合の復職制度である。この制度では、選挙に落選した場合のほか、選挙に当選した場合でも、議員としての任期満了後に復職できる制度となっているが、特に「集中専門型」であれば、一度議員になった場合には、あまり必要ない制度であるように感じる。むしろ立候補の段階で職を失うこととするのではなく、議員になった段階で職を失うこととする考え方もあるように思うが、そうした改正は現行制度下で行ってもよいのではないだろうか。
また、「多数参画型」においては、他の自治体の議員との兼職を可能とすることとしている。「多数参画型」は、議員の仕事量・負担を軽減するため、常勤職員との兼職も可能という趣旨だろうが、この場合だけ議員との兼職を可能とするのは、どこかすっきりしないものがある。