地方特別法の附則に設けられた規定

いわゆる地方特別法である「熱海国際観光温泉文化都市建設法」の附則には、次の規定が設けられた。

2 この法律は、日本国憲法第95条の規定により、熱海市の住民の投票に付するものとする。

この規定は、地方特別法が効力を生ずるのは住民投票を行った後であることを考えると、おかしな規定である。佐藤達夫『戦力その他』(P130)には、次のように記載されている。

この条文が法的に効力を発生するのは、住民投票で可決されて、しかも公布されたときである。従って、それでは文字どおり後の祭で何の役にも立たないということになる。しかし、法律的にはまさにそれに違いないとしても、この法律案が両院で可決されれば、少なくとも国会の意思として確定するわけであるから、いわば、この条文は、「この法律案は住民投票に付せられるべきものである。」という両院の付帯決議がここに場所を借りたものと見ることができようし、その趣旨では、何等かの法的意味をもつものといえそうに思われる。

以前(2017年5月19日付け記事「天皇陛下の生前退位(その4)」取り上げた、「天皇陛下の退位を実現する特例法」で皇室典範の附則に規定された規定もあまり類例のない規定であったが、少し変わった規定であっても、附則であれば許されるという面もあるのだろう。