内閣法制局と議院法制局(その2)

以前(2014年11月28日付け記事『内閣法制局と議院法制局』)において、「議院法制局は、内閣法制局よりも技術的に劣っているというのが、一般的な認識であろう」と記載したことがある。
こうした認識が持たれる理由は、2002年9月に発行された西川伸一『立法の中枢 知られざる官庁 新内閣法制局』に端的に記載されている。同書(P75)には、次の記述がある。

なにしろ、戦後の第1回国会から今日に至るまで、内閣法制局の審査を経て成立した法律のなかで、最高裁から違憲判決を受けたものは一つもないのだ。100点満点なのである。

さらに、同書(P75〜)では、1989年、参議院法制局が審査し、野党4党が提出した消費税廃止関連9法案が法案審議の過程で7か所もの法案誤記が明らかになり、法文中の用語法が憲法違反のおそれが多分にあると指摘されたことを取り上げている。
つまり、裁判所において違憲判断がなされていないこととミスがないことがその理由として挙げられている。
しかし、内閣法制局に関しても、最高裁判所に否定的な判断をされた例として、政令の適法性に関し、法律の委任の範囲を超えるとして無効とした判決が次のとおり存するところである。

また、立法のミスについては、形式的なものであるとはいえ、国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号)で40か所ものミスがあり、内閣法制局長官等が処分をされたことが思い出される。
さらに、牧原出『法の番人として生きる 大森政輔元内閣法制局長官回顧録』(P115)には、着任したばかりの参事官について、次のように記載している。

1年目はかなり部長のお荷物になる。部長も手が抜けない、目が離せないという状態ですね。

こうしてみると、内閣法制局に対する印象も多少変わってくるのであるが、閣法と衆法又は参法との比較という点からすると、法令所管省庁が立案に加わるがどうかという違いがあるから、また違った見方をすることになるのだろう。