新旧対照表方式は法律改正にも用いられるのか

省令等の改正において新旧対照表方式を用いることは、もはや当たり前のようになっているが、では、これが法律や政令まで広がるのだろうか。このことに関連して、衆議院事務総長である向大野新治氏の著書『議会学』(P183)に、次の興味深い記述がある。

かつて我が国帝国議会においても、議案審査特別委員会及び第二読会のステージでは逐条審議を行うことになっており、実際に実行されたことがあるものの、すぐに廃れていっている。これには、逐条審議が現実的ではなかったことがあろう。つまり、法案には、重点となる部分とそうでない部分があり、いちいち全て審議するのは、大変な労苦だったことがある。ましてや改正法案となると、その傾向が顕著であり、逐条審議の意義を見出すのは難しい。さらに、これに加えて、我が国の改正法案の作り方にも原因があったのかもしれない。溶け込み方式と言って、条文が、「第○条の「○○」の後に「△△」を入れ、「□□」を削除し、第○条中、「▽▽」を「◇◇」に改める」といった形で作られており、逐条審議になじまないのである。逐条審議のためには、新旧対照表方式にせざるをえないが、そうした提案がなされたことはない。

普通に考えると、新旧対照表方式が法律改正にまで用いられることは、事務的な提案等でなされるとは考えられない。そうすると、議案審議に必須ではない新旧対照表方式が政治的なレベルで採用しようという流れになることは考えにくいのだが、果たして……。