いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(6)

今回のシリーズは、この記事で当面終了である。
今回取り上げた判例の中で平成25年8月5日松江地裁判決は、違法とされなかったものの、訴訟の対象となる事案については、ほとんど違法の判断がなされており、その判断に対しては概して批判的な意見が多いものの、傾向としては定着してきていると言える。
裁判所は、法の文面、すなわち法138条の4第3項本文*1及び法202条の3第1項*2の文理から附属機関性を判断している。
平成25年11月7日大阪高裁判決及び平成27年6月25日大阪高裁判決は、いずれも第一審原告が上告を行っているが、前者は平成26年3月13日最高裁決定により、後者は平成28年4月22日最高裁決定により、民事訴訟法第318条第1項により不受理とされており、最高裁の判断はまだなされていない状況であるものの、現状では、組織体として活動するものについては、附属機関性を認められるものとして考えざるを得ないだろう。
ただし、私的諮問機関の設置自体は違法としても、損害賠償請求等について認めた判例は、高裁レベルでは、今回取り上げたものではなく、平成21年6月4日広島高裁判決に見られる程度である。
損害賠償請求等を認めない理由としては、平成25年11月7日大阪高裁判決及び平成27年6月25日大阪高裁判決では、附属機関の意義の解釈について必ずしも一致をみていないことなどから、故意又は過失により支出がなされたとはいえないというものである。以前の判例では、平成14年1月30日さいたま地裁判決において、支出した経費は各委員が会議に出席して提供した役務の対価として相当であるとして損害がないと判断したものがあるが、その後そうした判断をしているものは見当たらない。
そうすると、例えば『判例地方自治412号』(P9)では、「附属機関条例主義について厳格な判断がなされて支出の違法性までは認定されている現状で、今後、法律あるいは条例によらずして設置される附属機関への支出が違法であることの認識が難しかったとの理由で、長の故意・過失を否定する裁判例がいつまで続くのかは、全く不明であるといわざるをえません」とあるが、そうした点への留意も必要なのであろう。

*1:普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」という規定である。

*2:普通地方公共団体の執行機関の附属機関は、法律若しくはこれに基く政令又は条例の定めるところにより、その担任する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関とする」という規定である。