自治体の組織(8)〜附属機関(その1)

自治体の附属機関の設置は条例によることとされているが、なぜ条例事項とされているかについて理論的には説明できないのではないかということについては、既に「自治体の組織(1)〜はじめに」で多少触れているが、今回はそれを敷衍して述べてみたい。
まず、根拠規定を掲げておく。

地方自治法
第138条の4 (略)
2 (略)
3 普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。

自治体の附属機関が条例事項とされていることについて、岩崎忠夫『実務地方自治法講座2条例と規則』(P414)では、次のように記載されている。

附属機関は、昭和27年の法改正までは、必ずしも法律又は条例の根拠を要せず、執行機関が規則その他の規程で任意に設置することができるものとされていた。しかしながら、附属機関も普通地方公共団体の行政組織の一環をなすものであるから、どのような附属機関が設置されるかということは、住民にとって大きな利害関係事項であるところから、その設置については法律又は条例の根拠を要することとされ、議会によるコントロールに服することとなった。

しかし、昭和27年の地方自治法改正の際の国会審議における議事録には、次のように記載されている。

○ 第6款は附属機関に関する規定でございます。附属機関は条例でも附属機関を置くことができるということを明らかにいたしますために、「又は条例の定めるところにより」という規定を入れたのであります(昭和27年5月14日第13回国会参議院地方行政委員会における長野地方自治庁行政課長答弁)。
○ 執行機関の附属機関ということでございますので、これは国家行政組織法におきましても、附属機関というものを区分いたしておりますので、そのような考え方を踏襲いたした次第でございます(昭和27年5月26日第13回国会衆議院地方行政委員会における鈴木地方自治庁次長答弁)。

これによると、附属機関は自治体が独自に設置することができるかどうか疑義があったものを立法的に解決したのであり、その設置が条例事項とされたのは、当時の国のいわゆる八条機関の設置が法律事項とされていたので、それにならっただけではないかという感じがする。
その後、国の八条機関の設置は、一定の考え方*1のもとに法律事項とするものと政令事項とするものとに振り分けがされたわけだが、その考え方をそのまま自治体の附属機関に当てはめても、そのほとんどは条例で設置する必要はないことになる。
さらに、そもそも、組織に関する事項が法律事項とされているのは、住民の権利義務に関係するからであると考えると、例えば建築基準法第78条第1項に規定する建築審査会のように、法律で設置することとされている附属機関には不服申立てに対する裁決を住民に対して直接行うものもあるが、このような附属機関を条例で設けることは地方自治法の解釈として一般にはできないものと解されているため*2自治体が設置する附属機関はいわゆる法律事項に当たらないため、理論的には条例で設置する必要はないことになる。
もちろん、上記の建築審査会のように、直接住民に対して行為を行う附属機関を法律で設置することは可能なのだが、執行機関と附属機関の区別が不明確になるので、立法論的には法律でもそうした附属機関は設けずに、すべて執行機関の諮問等に基づいて行為を行うようにした方が適当と思われる*3

*1:その内容については、「自治体の組織(1)〜はじめに」を参照

*2:宇賀克也『地方自治法概説(第2版)』(P187)には、情報公開に関する附属期間について「地方公共団体が情報公開条例で審査会を設置する場合も、執行機関法定主義のゆえに、条例で裁決機関としての審査会を設けることができず、そのため、諮問機関としての審査会を設置するにとどめざるをえない。」と記載されている。

*3:さらに、個人的には対外的に活動するということになると、一定の責任等を生じるが、附属機関の委員は非常勤であること(地方自治法第202条の3第2項)等を考えると、あまり適当とは思えず、執行機関が一義的な責任を負うようにした方がいいのではないかとも思っている。