2010-01-01から1年間の記事一覧

ある自治体の条例における認証の仕組み(上)

今回から3回にわたって、「自治体法務研究」で紹介されていた某市の「ふれあい安心名簿条例」(以下次回も含めて単に「条例」というときは、この条例を指すものとする。)を取り上げる。 この条例は、個人情報に過剰に反応するあまり、学校その他の地域団体…

防災ヘリコプターの運行費用を利用者に求めることの可否(その2)

2010年10月15日付け記事「防災ヘリコプターの運行費用を利用者に求めることの可否」で取り上げた、山岳救助で防災ヘリコプターが出動した場合に遭難者に費用を請求できるようにする条例を、埼玉県が議員提出で成立させようとしていたことについては、結局、…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について〜読売新聞の記事から

kei-zuさん(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20101214)経由で、読売新聞2010年12月12日配信の記事から 飲酒運転処分 悩む自治体免職で敗訴 全国で相次ぐ 酒気帯び運転を理由とする懲戒免職は重すぎるとして、新潟市職員が処分取り消しを求めた訴訟は、市が敗…

条例事項を規則事項とすることについて

法律事項であっても、技術的・専門的事項や経済事情の変動に応じて機動的・弾力的に対処しなければならない事項、地域的特性を十分に加味する必要がある事項などは、法律上適当なしぼりを加えて上で、命令に委任することは一般に認められている(田島信威『最…

議会に提出したが成立しなかった条例案

自治体において執行部が提出した条例案が議会で成立しないことは、今はそれ程珍しいことではないのかもしれないが、一昔前は想像できなかったことであり、それが起きれば大事件であっただろう。 西寺雅也前岐阜県多治見市長の御著書『自律自治体の形成』(P21…

泥棒に作らせた法律〜政治資金規正法の規定の例

公職選挙法や政治資金規正法を政治家に作らせることは、泥棒に鍵を作らせるのと同じようなものだと言われることがある。その一例といえる政治資金規正法の規定について触れることにする。 政治資金規正法(以下「法」という。)による政治団体は、毎年、収支…

法案の立案姿勢における日英の比較

法案の立案姿勢について、我が国とイギリスでは次のような違いがあるとのことである。 ……より具体的な条文起草に当たっての心構えについても、日英間に相違があるようである。日本では、条文の立案に当たっては、法的安定性や法体系の整合性を重視するという…

職員の任命に関する一考〜発令の一部を委任することに関する議論から

以前、洋々亭さんのサイト(http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/yybbs/)で、次の疑問に対して議論がなされていました。 通常、人事異動の際、任命権者から「○○課△△係長を命ずる。」との発令がなされると思いますが、任命権者は「○○課係長を命ずる。」との発令を…

表の一部分の特定の仕方(下)

別表の一部改正において改正部分を特定する場合、通常は、『別表中「……」』とするか、『別表○○の項中「……」』とすることになる。しかし、それ以外の方法で特定することもある。今回は、そのような例のうち珍しいものを幾つか取り上げる。 1 別表の備考以外…

表の一部分の特定の仕方(中)

今回は、表の項について変わった特定の仕方をしている例を2例程取り上げる。 1 航空法施行令別表の例 航空法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成17年政令第249号)(航空法施行令の一部改正)第1条 航空法施行令(昭和27…

表の一部分の特定の仕方(上)

少し前になりますが、半鐘さん(http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-379.html)が、一部改正における表の細分の特定の仕方について取り上げておられました。 私も例規における表(別表)の一部分の特定の仕方に悩むことがあったのですが、それは、…

防災ヘリコプターの運行費用を利用者に求めることの可否

山岳遭難者にヘリ費用請求…埼玉県、条例成立へ山岳救助で防災ヘリコプターが出動した場合、遭難者に費用を請求できるようにする条例が、埼玉県議会で成立する見通しとなった。登山ブームで山岳救助件数は増加傾向にあり、費用請求を可能とすることで安易な入…

「設置する」と「置く」(下)

吉国一郎ほか『法令用語辞典(第9次改訂版)』(P473)における「設置」という用語の記載で、次のようなものがある*1。 ある施設又は制度を法律上の存在として設ける行為をいう。……この意味の「設置」と同じ意味で、単に「設ける」又は「置く」という表現が用…

「設置する」と「置く」(上)

少し前になりますが、kei-zuさん(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100821)が「設置する」と「置く」について取り上げておられましたが、私も特に組織に関してこれらの用語が用いられている例を取り上げてみることにします。 法令用語研究会『法律用語辞典…

「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(下)

今回は、「○○」が法令以外の場合の規定例や同一の法令でも書きぶりに整合が取れていない規定例を取り上げる。1 法令以外の法形式等に委任する場合 予算などの法令以外の法形式等に委任する場合の書き方としては、下位の例規に委任する場合と同様、次のよう…

「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(中)

前回(「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(上))、同位の例規の規定事項を引用するような場合には、「○○に定める……」とするのが原則ということになると記載した。 しかし、例えば法律が法律を引用する場合であっても、次のような例は、法律という…

「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(上)

下位の例規に委任する場合や同位の例規の規定事項を引用するような場合に「○○×定める……」と書くとき、この「×」の部分を「で」とするのか「に」とするのか迷ったことがあった。 しかし、次にような例と比較して考えることで、自分の中では一定の整理をしてい…

項を「削除」とすることができない理由

2010年8月27日付け記事で取り上げた『政策条例のつくりかた』の中で、松下先生は、法制執務に関し、「なぜ『項』は単なる段落で、それゆえ『削除』とすることはできないだろうか」(P197)と疑問を述べられています。 私は、その理由は、もともと項には項番号…

「政策条例のつくりかた」

松下啓一先生から、御著書『政策条例のつくりかた』をいただきました。ありがとうございました。 この御著書には、政策条例の立案の過程が、原課の立場から具体的に記載されており、実践的な内容となっています。松下先生は、その立案過程のなかでも調査・調…

「○○に相当する金額」

金額を表示する際に、次のように「○○に相当する金額」という用語をよく見かける。 平成21年法律第28号による改正前の道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)(道路整備費の財源) 第3条 政府は、平成20年度以降10箇年間…

いわゆる「議員歳費返納法」について

マスコミで「議員歳費返納法」とか「議員歳費自主返納法」とか言われている「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律」が、この6日に成立し、11日に公布された。 この法律は、附則に次の1項を加えることを内容とする法律である。…

現在では用いられない改正方法(6)

連続する3以上の条について同じ改正をする場合において、当該条を指示するときには、「第○条から第×条までの規定中」とすることとされている。 この場合に、「第○条から第×条まで中」と指示しないのは、表現上違和感があることによるものであろうとされてい…

「努めなければならない」と「しなければならない」

洋々亭さんのサイトで、「努めなければならない」と「しなければならない」という用語について議論されていましたが、私が例規審査をしていたときに、これらの用語の使い方について感じていたことを記してみます。 一般的に、「努めなければならない」という…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて〜大阪高裁判決から(下)

私は、大阪高裁判決の原判決である大津地裁判決について、2009年5月29日付け記事で、次の3点について疑問があると記載した。 1 立法趣旨を強調し過ぎている点 2 常勤・非常勤の区別が曖昧であること 3 自治体の行政委員の報酬は、それ程高額ではないこ…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて〜大阪高裁判決から(中)

今回は大阪高裁判決が、どのような判断基準で、どのような結論を出したのか触れることにする。 1 本件条例中の月額報酬制に関する規定の適法違法の判断基準 大阪高裁判決は、以上のような考え方に基づき、本件条例中の月額報酬制に関する規定の適法違法の判…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて〜大阪高裁判決から(上)

以前取り上げた、非常勤の行政委員の報酬を月額制とすることを違法とする大津地裁平成21年1月22日判決に対する控訴審判決である大阪高裁平成22年4月27日判決(以下「大阪高裁判決」という。)は、地方自治法第203条の2第2項の解釈について、その制定経緯…

非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて〜全国知事会行政改革PT中間報告

都道府県の天下り見直しへ 知事会PTが中間報告全国知事会の行政改革プロジェクトチーム(PT)は5日、中間報告をまとめた。天下りについて「ほとんどの都道府県で職員が外郭団体に再就職したケースがある」と実態を認めた上で、早期勧奨退職の段階的解消…

飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について〜毎日新聞の記事から

既にkei-zuさん(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100628)やkinkinさん(http://kinkin2.blog42.fc2.com/blog-entry-454.html)が取り上げていますが、私も触れておくことにします。 公務員の飲酒運転:「原則懲戒免職」緩和の動き飲酒運転した公務員を事故…

現在では用いられない改正方法(5)

前回記載した、法制執務研究会『新訂ワークブック』(P459)の引用部分の後段、すなわち、連続する4以上の条等の繰り下げの場合に、最後尾のものについては原則どおりの繰下げを行い、その前の3以上の条、項又は号については一括して繰下げを行うことの例外…

現在では用いられない改正方法(4)

今回は、条等の移動について、現在では用いられない改正方法を取り上げる。 まず、条等の移動の場合の改正方法の原則を確認しておく。法制執務研究会『新訂ワークブック』(P459)には、条等の繰下げの場合であるが、次のように記載されている。 繰下げは、原…