2014-01-01から1年間の記事一覧

直接強制と即時強制

人の身体に直接実力を行使する仕組みとして、直接強制と即時強制があるが、自治体の条例においては、行政代執行法第1条の解釈から、前者の制度は設けることができないと解されている(鈴木潔『強制する法務・争う法務』(P88)参照)。したがって、条例におけ…

立入検査の規定における解釈規定

条例で立入検査の規定を置く場合に、あわせて法律の例にならって「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という解釈規定を置く例がみられる。 こうした規定を置く理由は、行政上の立入検査は、裁判官の令状なしにその権限を付与するものであり…

行政上の義務履行を司法手続で求めることに関するメモ

須藤陽子『行政強制と行政調査』(P5〜)によると、行政執行法を廃止し、行政代執行法を制定する過程において、法制局が、各省と意見交換を行い、それを踏まえてまとめた、昭和23年1月22日付け「公法上の義務の履行強制制度の存廃(行政執行法第五條)」とい…

行政不服審査における議論から地方分権を考える

介護保険法において、要介護認定等の処分を市町村が行い、それに対する不服審査は都道府県に置かれる介護保険審査会が処理するというスキームが採られているのは、保険事務の引き受けをしぶる市町村の負担を軽減するという観点等からであるということについ…

内閣法制局と議院法制局

議院法制局は、内閣法制局よりも技術的に劣っているというのが、一般的な認識であろう。例えば、元通商産業省の官僚で、衆議院議員の江田憲司氏は、高橋洋一氏との共著である『霞が関の逆襲』(P94)において、次のように記載している。 法律案の作成や審査を…

改正理由が共通する条例の改正を一の条例で改正しないことについて

いつも勉強させていただいている「反則法制」の「複数の条例の改正」という記事に、次のような記載がある。 A法の一部を改正する法律の施行に伴い、複数の条例を改正する必要がある場合は、「○○条例等の一部を改正する条例」又は「A法の一部を改正する法律…

検討規定

法律の附則には、一定の時期に法律の見直しを行うことを検討することとする規定を置くことがあるが、その規定は、次のように政府に義務付けることとする例が多い。 公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)附 則(検討)第13条 政府は、この法律の…

直罰と間接罰の基準に関するメモ

行政刑罰は、法令の違反行為があった場合に直ちに適用することとする場合と、法令違反行為に対し命令を前置し、当該命令違反の場合に適用することとする場合とがある。前者を直罰、後者を間接罰というが、どういう場合にどちらが採用されるかについて、北村…

補助金の交付について条例化すること

Washitaさん経由 補助金不正防止へ独自条例 NPO問題で県検討県は14日、県議会9月定例会の決算特別委員会で、山田町の緊急雇用創出事業をめぐるNPO問題などを踏まえ、補助金適正化法に準じた独自の条例制定を検討する方針を示した。同法には不正受給や…

続・都道府県条例に市町村の責務を規定することについて

都道府県条例に市町村の責務を規定することについては、以前(2008年2月29日付け記事「都道府県条例に市町村の責務を規定することについて」)取り上げたことがあるが、少なくとも私の周囲では、それが適当でないという意見を言う人は少なく、むしろ規定す…

組織に関する規定の位置

条例で、実体的な規定と併せて審議会のような組織に関する規定を置く場合、通常は雑則の前辺り、つまり後ろの方に置くのが通常である。 法律の例を見ると、例えば、総合特別区域法では、内閣に総合特別区域推進本部を置くこととしている。同法の章名は次のと…

公契約条例と指定管理者制度

前回、野田市公契約条例において気になる規定があると記載した。それは、次に掲げる同条例第2条第1号の規定である。 (定義)第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。(1) 公契約 市が発注する工事又は製造…

公契約条例

半鐘さんが公契約条例について取り上げ、そのタイプを野田市型と川崎市型に分類して、その違いを述べられている。 それぞれの条例(野田市公契約条例、川崎市契約条例)において、契約上の賃金の最低額を定める規定は、次のとおりとなっている。 <野田市公…

附属機関の委員の守秘義務と罰則

附属機関を設置する場合、秘密事項を扱うようなものについては、その委員に守秘義務を課し、その違反に対し罰則を科すことによって、その履行を担保することが通常だと思われる。 しかし、国のいわゆる八条機関である国地方係争処理委員会の委員については、…

附属機関の委員の任期

附属機関の委員の任期は、どの程度にすべきであろうか。松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P1055)には、いわゆる八条機関である国地方係争処理委員会の委員に関する記述において、次のように記載されている。 審議会等の運営の安定を図る観点…

章等の末条を繰り下げて、その次に条を追加する場合の改め文

章等の末条を繰り下げる場合、「第○章中第○条を第△条とする。」のように、その条が含まれる章を明示することとされている。 では、章等の末条を繰り下げて、その次に条を追加する場合に、それらの条が含まれる章等の明示は、どのようにするのだろうか。法律…

例規の立案で間違いやすい例(27)

地方整備局組織規則の一部を改正する省令(平成25年国土交通省令第41号) (略)第145条の2第1項中……に改め、同条を第145条の2の2とし、第145条の次に次の1条を加える。第145条の2 (略)第145条の2の2の次に次の1条を加える。第145条の3 (略) …

『法実務からみた行政法 エッセイで解説する国法・自治体法』

id:kei-zuさんから表題の御著書をいただきました。ありがとうございました。 『法学セミナー』に「法令エッセイ クロスセッション 国法・自治体法の現場から」として連載されていた当時は、時事的な話題のほうが印象に残ったのですが、今回は、「自治体条例…

中国残留邦人等支援法に基づく支援給付の事務の委任

いつも興味深く拝見している「反則法制」において、おおさか政策法務研究会管理人さんが「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(以下「中国残留邦人等支援法」という。)に基づく支援給付の実施を委任する場合の規定の…

例規の立案で間違いやすい例(26)

福島復興再生特別措置法施行規則の一部を改正する庁令(平成25年復興庁令第3号) (略)別記様式第10中……に改め、同様式を第11とし、同様式の次に次の4様式を加える。 (略) 様式の表示をどのようにするのかについては、統一したルールはないのだが(2007…

典型的なものを列挙する規定〜抗告訴訟の類型

次の規定は、抗告訴訟を定義している行政事件訴訟法第3条の規定である。 (抗告訴訟)第3条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力…

「付」と「附」の使い分け

「付」と「附」の使い分けについて、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P602)は、次のように記載している。 ……同音異字の漢字の用法の問題がある。その典型的なものとして、「付」と「附」がある。その原義としては、「付」が「わたす」・「あたえ…

共同規則

kei-zuさんが、複数の執行機関による共同規則は可能かということを取り上げておられた。 共同規則については、私も否定的に考えているが、その理由は、自治体の規則制定の根拠は法律にあり、法律に共同規則を制定することができる根拠規定がない、すなわち法…

例規の立案で間違いやすい例(25)

山村振興法第14条の地方税の不均一課税に伴う措置が適用される場合等を定める省令等の一部を改正する省令(平成25年総務省令第38号) (略)(過疎地域自立促進特別措置法第31条の地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置が適用される場合等を定める省令の…

複数の法律を一の法律で改正する理由

一部改正法の本則で複数の法律を同時に改正する場合は、その動機が共通の動機である場合である(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P354)参照)。 ところで、第183回国会に提出されて可決・成立した「水防法及び河川法の一部を改正する法律案」(…

条例による政省令の上書き

平成24年法律第73号により構造改革特別区域法が改正され、政令又は主務省令により定められた規制の特例措置を条例で定めることができるようにするため、次の規定が設けられた。 (地方公共団体の事務に関する規制についての条例による特例措置)第35条 地方…

法文の平易化の限界

法文を平易化すべきということは、何も疑いもなく言われていることである。しかし、長尾龍一氏は、「法的言語と日常言語」『法学ことはじめ』において「法律用語を一定限度以上易しくすることは原理上不可能で、法令平易化論者を充分満足させることはできな…

検討条項(下)

法律における検討条項は、次のように期限を明示して検討を義務付ける例が多い。 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号) 附 則(検討)第2条 政府は、この法律の施行の日から5年以内に、この法律に基づく特定…

検討条項(上)

法律の附則に、検討条項と呼ばれる規定が置かれることがある。この検討条項について、山本庸幸『実務立法技術』(P177)には、次のように記載されている。 特に最近の法律の附則中によく見受けられるようになった規定として、いわゆる検討条項がある。これは、…

公契約条例に罰則を設けることについて

washitaさん経由 全国初の罰則付き - 県公契約条例県は、国や地方自治体が公共事業を民間業者に委託する際に結ぶ「公契約」で、受注者に対して従業員への最低賃金以上の支払いなどを求める罰則付きの「公契約条例」を、全国の都道府県で初めて制定する。賃金…