章名の改正

章名の改正方式は、前田正道『ワークブック法制執務(全訂)』(P374〜)*1には、次のように記載されている。

章名、節名等は、それが一体のものであるとして、これらのうち改めるべき部分が一部にとどまる場合にも全体として改める方式をとるのが原則である。
改正の方式としては、次の例1の方式を原則とするが、例2の方式をとることも認められる。
なお、章名、節名等のうち改める部分が一部にとどまる場合に、例3に示すように、当該部分のみを改める方式をとる例もないわけではない。
<例1>
「第2章 特定紡績業の構造改善」を「第2章 特定繊維工業の構造改善」に改める。
<例2>
第2章の章名を次のように改める。
第2章 一般ガス事業*2
<例3>
第6章の章名中「核燃料物質」を「核燃料物質等」に改める。

例1の方式をとる最大のメリットは、章名を改めるとともに章の繰下げ等を行う場合に、次のようにすることができることではないだろうか。

「第2章 ○○」を「第3章 △△」に改める。

しかし、章名と同様の文字が目次にもあることを考えると、私は、例1の方式をとることには抵抗を感じる。
そうすると、上記の場合に例2の方式で改めようとすると、章名を改めた後に章の繰下げを行うか、章名を1度削った後に再び章名を付すということになってしまい*3、不合理ではある。
ただ、そうした不合理な面も、例3の方式を併用すれば、大分解消されるのではないだろうか。
上記のとおり、例3の方式をとるのは例外的なものとされているようであり、それは、題名と同様、章名も一体のものであると考えているからであろう。しかし、これが目次になると、次のように改正すべき字句のみを引用して改める方式も例外的なものとされていないようである。

目次中の一部の字句を改正する場合には、……章名、節名等の全部を引用して改正する方式のほか、……その改正すべき字句のみを引用して改正する方式がとられることも多い。前掲書(P366)

そうすると、同じ章名を改めるのに、本則と目次とで字句の引用の仕方が違ってしまう場合もあり、それもいかがかと思ってしまう。

   会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)
 (商業登記法の一部改正)
第135条 商業登記法の一部を次のように改正する。
  目次中……「抹(まつ((ルビ)))消(第107条―第113条)」を「抹消(第132条―第138条)」に……改める。
   (略)
  第3章第10節の節名を次のように改める。
     第10節 登記の更正及び抹消
   (略)
 (社債等の振替に関する法律の一部改正)
第235条 社債等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)の一部を次のように改正する。
  目次中「営業」を「事業」に、「商法」を「会社法」に……改める。
   (略)
  第2章第4節の節名中「営業」を「事業」に改める。
   (略)
  第4章第4節の節名中「商法」を「会社法」に改める。

上記のように、法令では、同じ章名を改める場合の本則と目次における字句の引用の仕方の整合をあまり意識していない気はするが、私は、その整合を図るべきであり(上記の法令の例でいうと、第235条におけるような改め方をすべきである)、したがって、例3の方式をあまり例外的に考えなくてもいいのではないかと思っている。

*1:法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P419〜)では、規定例は差し替えられているが、内容は同様

*2:配字は、無視する。

*3:私は、後者のやり方の方がいいように感じている。