義務付け・枠付けの見直しに関する条例における規則への委任

今次の地方分権に係る一括法において行われた義務付け・枠付けの見直しに関して、条例に委任された事項をさらに規則へ委任することについて、国の立案を担当した職員の次のような見解がある。

条例で基準を定めるに当たって、規則への委任範囲についても、各団体によってさまざまな形があり得る。
ただ、作業効率を重視するあまりか、または内容面の検討を当面先送りするためか、条例のすべてを規則に落とす手法を推奨し、またその方が無駄な議会審議を避けられるといった極端な意見もあると聞く。しかし、そのような極端な条例形式が適切であるはずがない。そもそも議会への説明が困難であろう。
 (中略)
今回の見直しは、繰り返しになるが、基準の決定主体を国から自治体に移す取り組みである。地域の判断に委ねる前提として、基準の内容を条例化して議会の審議・決定にかからしめることには誠に重要な意義がある(前内閣府地域主権戦略室参事官 大村慎一「義務付け・枠付けの見直しに関する条例制定の動向」『自治体法務研究(No.31)(P13)』)。

以前(2012年9月2日付け記事「義務付け・枠付けの存置を許容する場合のメルクマール」)、今回の一括法においては、そもそも条例事項とするのに適当でない事項が条例に委任されているということを記載したが、今回の条例委任の意義については、抽象的に語られることはあっても、具体的に法令の項目ごとにきちんと説明されているものは見たことがなく、上記の論文も同様である。
さらに、上記の論文に「今回の見直しは、……基準の決定主体を国から自治体に移す取組である」とあるが、国においては基準を省令で定めていることが通常であることからすると、「国から自治体に移す取組」というよりも「省令から条例に移す取組」である。仮にそれが「自治体に移す取組」であるとしても、自治体の場合、それを条例で定めることが必然ではない。
この点について、磯崎初仁『自治政策法務講義』(P184)には、次のように記載されている。

自治体の裁量を重視するのであれば、条例で定めることを「義務付け」しないで、何をどういう形式で定めるかを含めて自治体に任せるべきであった。もともと法令の規律密度が高いことが問題であり、それを引き下げて自治体の自由度を増すことが求められているのに、条例という形式を指定することは合理的でない。特に、委任事項には技術的な事項が多く、議会での審議を求める実益が乏しいものも少なくない。

全く同感である。しかし、その形式も含めて自治体に任せるとすると、法律における規定方法について、難しい面もあるように感じる。