中国残留邦人等支援法に基づく支援給付の事務の委任

いつも興味深く拝見している「反則法制」において、おおさか政策法務研究会管理人さんが「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(以下「中国残留邦人等支援法」という。)に基づく支援給付の実施を委任する場合の規定の仕方について取り上げておられた。きっちり書くとすると、事務の根拠となっている条文を逐一引用することになるため、確かに美しさという点からするとよろしくないことになるが、ここでは、あえてきっちり書くとしたらどのようになるか記載してみたい*1
まず、次に中国残留邦人等支援法等に基づく関係規定を掲げる。

中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成6年法律第30号)
(支援給付の実施)
第14条 この法律による支援給付(以下「支援給付」という。)は、特定中国残留邦人等であって、その者の属する世帯の収入の額(その者に支給される老齢基礎年金その他に係る厚生労働省令で定める額を除く。)がその者(当該世帯にその者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、その者以外の特定中国残留邦人等その他厚生労働省令で定める者があるときは、これらの者を含む。)について生活保護法(昭和25年法律第144号)第8条第1項の基準により算出した額に比して不足するものに対して、その不足する範囲内において行うものとする。
2・3  (略)
4 この法律に特別の定めがある場合のほか、支援給付については、生活保護法の規定の例による。
5〜8 (略)
中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)
   附 則
(施行前死亡者の配偶者に対する支援給付の実施)
第4条 特定中国残留邦人等であって、その者の属する世帯にその者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、特定中国残留邦人等以外の者に限る。以下同じ。)があるものが附則第1条第4号に掲げる規定の施行前に死亡した場合において、当該配偶者(以下「施行前死亡者の配偶者」という。)が当該規定の施行の際現に生活保護法による保護を受けている者であり、かつ、当該規定の施行後も当該施行前死亡者の配偶者の属する世帯の収入の額(厚生労働省令で定める額を除く。)が当該施行前死亡者の配偶者(当該世帯に厚生労働省令で定める者があるときは、その者を含む。)について生活保護法第8条第1項の基準により算出した額に比して継続して不足するときは、当該世帯に他の特定中国残留邦人等又は中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律第14条第3項の規定により同条第1項の支援給付を受けることとなる特定配偶者(同法第2条第3項に規定する特定配偶者をいう。)、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第106号。以下この項において「平成25年改正法」という。)附則第2条第2項の規定によりなお従前の例によることとされた平成25年改正法による改正前の中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律第14条第3項の規定により同条第1項の支援給付を受けることとなる配偶者若しくは平成25年改正法附則第2条第3項の規定により中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律第14条第1項の支援給付を受けることとなる配偶者がある場合を除き、当該施行前死亡者の配偶者に対して、厚生労働省令で定めるところにより、当該施行前死亡者の配偶者の生活を支援する給付(以下「支援給付」という。)を行うものとする。ただし、当該施行前死亡者の配偶者が当該死亡後に婚姻したとき(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者となったときを含む。)は、この限りでない。
2 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律第14条第2項及び第4項から第8項まで並びに第16条の規定は、支援給付について準用する。
3 (略)

規定しなければいけない事務は、中国残留邦人等支援法第14条第1項に規定する支援給付と平成19年法律第127号附則第4条第1項に規定する支援給付の実施になるが、事務の根拠としては、いずれも中国残留邦人等支援法第14条第4項においてその例による生活保護法の規定になってくる。
したがって、事務の根拠となっている条文を引用するためには、生活保護法まで引用せざるを得ず、次のような規定を列挙していくことになる。

中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成6年法律第30号)第14条第4項(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)附則第4条第2項において準用する場合を含む。)の規定によりその例によるものとされた生活保護法第○条第○項の規定による××

上記の「××」の部分は、生活保護法の各規定で定めている事務を具体的に書くことになるが、単に「事務」とするのであれば、生活保護法の個々の規定の条項名を列挙するだけでになるので、一文で済むことになる。
また、中国残留邦人等支援法の事務を委任するのであれば、生活保護法の事務についても委任しているであろうから、その委任規定とまとめて書くこととして、「生活保護法第○条第○項(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成6年法律第30号)第14条第4項(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)附則第4条第2項において準用する場合を含む。)の規定によりその例によるものとされた場合を含む。)の規定による××」と規定する方法もあるだろう。

*1:事務の根拠となっている条文を逐一引用せずに、ざっくりと書こうとするのであれば、「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成6年法律第30号)第14条第1項又は中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)附則第4条第1項に規定する支援給付の実施」とするのがよいように思う。