届出に関する規定の書き方

前回まで届出について書いたからというわけでもないが、今回は、届出に関する規定の具体的な書き方について記載してみたい。
届出に関する規定には、石毛正純『自治立法実務のための法制執務詳解』(P169)にあるように、届出をすべき主体(届出義務者)、届出をすべき事項(届出事項)、届出期限等を記載することになる。そして、細目的事項は規則に委任することになるのだが、それをどのようにするときれいに書けるのか。特に、届出書と併せて添付書類を提出させる場合に、添付書類について特に条例で委任せずに、規則で書いている例を結構見かけるが、適当であろうか。
これは、地方自治法第14条第2項で義務を課し、又は権利を制限するには、条例によらなければならないとされていることをどのように考えるかということであろうが、松永邦男ほか『自治立法』(P258)には次のように記載されている。

「条例・規則等への委任に関する政府の考え方」(地方分権推進委員会意見(平成12年8月8日)別紙4)(4)においても、「権利義務規制に関連する事項ではあるが、地方公共団体の執行機関の個別執行活動として整理されるものであり、基本的な規範の定立に該当しない事項」及び「権利義務規制に関連する事項であり、かつ、基本的な規範の定立に該当する事項であるが、その内容は法令に規定されている権利義務規制に関する付随的事項に限定されたものであり、かつ、独自の権利義務規制を新たに創設するものではない事項」(例としては、法令に規定されている権利義務規制に関する一定の算式、手法等に基づく数値の算出等、法令に規定されている権利義務規制に関する様式、添付書類、受付窓口等の手続的事項)は、「そもそも改正地方自治法第14条第2項の射程外である」

これによると、添付書類については、本来的な条例規定事項ではなく、規則で定めることもできるようにみえる。添付書類は、届出事項に付随するものだと考えているのであろう。しかし、添付書類のすべてが届出事項に付随するものであると整理できるかは疑問である。
ここで、法令の規定例を掲げる。

<例1>
ダイオキシン類対策特別措置法
(特定施設の設置の届出)
第12条 特定施設を設置しようとする者は、環境省令で定めるところにより、次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。
(各号略)
2 前項の規定による届出には、特定施設の種類若しくは構造又は発生ガス若しくは汚水若しくは廃液の処理の方法等から見込まれるダイオキシン類の排出量(大気基準適用施設にあっては排出ガスに含まれるダイオキシン類の量とし、水質基準対象施設にあってはその水質基準対象施設が設置される特定事業場(以下「水質基準適用事業場」という。)の排出水に含まれるダイオキシン類の量とする。)その他環境省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。
ダイオキシン類対策特別措置法施行規則
(特定施設の設置等の届出)
第4条 法第12条第1項‥‥の規定による届出は、様式第1による届出書によってしなければならない。
2 法第12条第2項の環境省令で定める事項は、ダイオキシン類発生抑制のための構造上の配慮及び運転管理に関する事項、緊急連絡用の電話番号その他緊急時における連絡方法並びに大気基準適用施設にあっては第1号、水質基準適用事業場にあっては第2号に掲げるものとする。
(各号略)
<例2>景観法
(届出及び勧告等)
第16条 景観計画区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令(第4号に掲げる行為にあっては、景観行政団体の条例。以下この条において同じ。)で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を景観行政団体の長に届け出なければならない。
(以下略)
景観法施行規則
(景観計画区域内における行為の届出)
第1条 景観法(以下「法」という。)第16条第1項の規定による届出は、同項に規定する事項を記載した届出書を提出して行うものとする。
2 前項の届出書には、次に掲げる図書を添付しなければならない。ただし、行為の規模が大きいため、次に掲げる縮尺の図面によっては適切に表示できない場合には、当該行為の規模に応じて、景観行政団体の長が適切と認める縮尺の図面をもって、これらの図面に替えることができる。
(以下略)

例1は、添付書類を提出させることを法律上明記している。しかし、例2は、明記していない。「国土交通省令‥‥で定めるところにより」という文言で委任しているのかもしれないが、届出事項に付随するものしか添付書類として想定していないから明記していないと考えるべきなのかもしれない。後者のように考えると、条例でも明記する必要はないことになる。しかし、実際には、条例の立案の段階では、添付書類の詳細まで決まっていないこともあることを考えると、例1のように添付書類を提出させることを明記するようにした方が適当だと思う。
ただ、例1の場合、法第12条第1項の「環境省令で定めるところにより」という部分を受けて、省令では様式しか定めていないようであるが、届出事項が条例上明記されていれば、様式を定めることは当然長の権限に属する事務(地方自治法第15条第1項参照)といえるため、様式を定めることを条例で委任することは不要だと思う。
以上によると、具体的には、次のように記載すればいいのではないか。

<規定例>
第X条 〜をしようとする者は、あらかじめ、◇◇その他規則で定める事項を○○に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出には、××その他規則で定める書類を添付しなければならない。

もちろん、届出事項や添付書類については、場合によっては各号で書き下ろすことも考えるべきであろう。