条等の前に条等を加えることとする場合

「第○条の前に次の1条を加える。」というように、条等の前に条等を追加する場合がある。具体例を掲げる。

土地改良法等の一部を改正する法律
(土地改良法の一部改正)
第1条 土地改良法(昭和24年法律第195号)の一部を次のように改正する。
(略)
第90条第7項を削り、同条第8項中……に改め、同項を同条第7項とし、同条第9項中……に改め、同項を同条第8項とし、同項の次に次の1項を加える。
9 (略)
第90条第11項を同条第12項とし、同条第10項中……に改め、同項を同条第11項とし、同項の前に次の1項を加える。
10 (略)

これは、第90条第7項を削り、同条第8項及び第9項を繰り上げ、同項の次に2項を加え、同条第10項及び第11項を繰り下げている例である。ここで、新第10項を加えるのに、「…の前に…」としている。この場合、「…の次に…」としようとすると、「…同条第11項とし、同条第9項の次に次の1項を加える」とするのであろうが、そうすると、旧第9項は旧第8項に繰り上げているので、はたして新第10項が新第9項の次に来ることになるのか疑義が生じるので、「…の前に…」としているのであろう。
また、次のような例がある。

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第44号)
(略)
第62条を第62条の2とし、第7章中同条の前に次の1条を加える。
(海洋投棄の制限)
第62条 (略)
第63条の前に次の1条を加える。
(主務大臣等への報告)
第62条の3 (略)

これは、第62条を第62条の2とし、同条の次に1条を加えている例であるが、新第62条の3を加えるのに、「…の前に…」としている。これは、「…の次に…」としようとすると、旧第62条が章の冒頭にあるため、「第62条の2の次に次の1条を加える」とするのであろうが、改正前の法には第62条の2はないので適当ではないであろう。
ところで、以前の記事である「改める途中で全改される条を移動する場合の改め方」において、石毛正純『自治立法実務のための法制執務詳解(四訂版)』(P386)の記載を取り上げた際に、改正案文は対象法令の冒頭から作成すべきであるという原則を重視すれば他の方法もあるのではないかと記載した。これらの例をみると、その原則を結構重視しているのではないかという感じがする。ちなみに、これらの例は、同記事の例7のような方法をとることができない例である。