制裁として用いる公表に関するメモ(9)

8 緊急時に国民への情報提供と併せて公表を行うこととしているもの
 ○ アルコール事業法に基づく公表制度
<根拠規定>

(緊急時の措置)
第41条 経済産業大臣は、緊急時(アルコールの供給が大幅に不足し、又は不足するおそれがある場合において、アルコールの供給を緊急に増加する必要があると経済産業大臣が認めるときをいう。以下この条において同じ。)においては、経済産業省令で定めるところにより、製造事業者、輸入事業者、販売事業者又は許可使用者に対し、緊急時であることを示してアルコールの製造予定数量その他の必要な情報の報告をさせ、当該報告に基づき、製造事業者又は輸入事業者に対し、アルコールの製造予定数量又はアルコールの輸入予定数量の増加その他の必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2 経済産業大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、当該勧告を受けた者が、正当な理由がなく、その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
3 経済産業大臣は、緊急時においては、国民経済の健全な発展に寄与するため、アルコールの製造、輸入、流通又は在庫の状況に関し、必要な情報を国民に提供するものとする。

<国会答弁>

通常は、つくり惜しみとか売り惜しみによる地域的な品不足の事態については、他の化学工業と同じように市場の原理が働いてアルコールの供給がきちんといくような、そういう状態は今までの形の市場の原理では解消されていったわけですが、今お話がありましたような例えば災害が起こったとかそういうような場合、あるいは今のような例えばつくり惜しみや売り惜しみでも、それが本条文にありますように供給力に著しく影響を与えるような、そういう場合でございますとこの41条は適用できるというふうに考えます。原則は市場原理ですけれども、災害その他の場合に加えて売り惜しみだとかつくり惜しみのような場合でも、極度に著しい供給不足が起こるような場合には勧告し得ると理解します。(平成12年3月16日第147回国会参議院経済・産業委員会、深谷通商産業大臣答弁)

 (注) 市場原理に任せておけない場合に行政が介入するという趣旨か。
<参考>
第41条第3項の規定にあるとおり、次のとおり勧告・公表と併せて国民への情報提供を併せ行うこととしている。

41条にございますように、万一勧告に従って増産その他の措置を講じていただけない場合には、その事業者の氏名を公表するという社会的な指弾に訴えるというような措置も用意をいたしているところでございまして、あわせまして私ども、この41条の3項にもありますように、そういう事態に立ち至りました場合には消費者の方々に十分な情報提供をするというようなこともあわせ予定をいたしておりまして、先生御指摘のような所期の目的はこういう措置によって十分達し得るものというふうに考えております。(平成12年3月16日第147回国会参議院経済・産業委員会、岡本通商産業省基礎産業局長)

9 法的根拠なく行っていた公表を法律に取り込むこととしたもの
 ○ 電波法に基づく公表制度
<根拠規定>

(基準不適合設備に関する勧告等)
第102条の11 総務大臣は、無線局が他の無線局の運用を著しく阻害するような混信その他の妨害を与えた場合において、その妨害が第三章に定める技術基準に適合しない設計に基づき製造され、又は改造された無線設備を使用したことにより生じたと認められ、かつ、当該設計と同一の設計に基づき製造され、又は改造された無線設備(以下この項及び次条において「基準不適合設備」という。)が広く販売されており、これを放置しては、当該基準不適合設備を使用する無線局が他の無線局の運用に重大な悪影響を与えるおそれがあると認めるときは、無線通信の秩序の維持を図るために必要な限度において、当該基準不適合設備の製造業者又は販売業者に対し、その事態を除去するために必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
2 総務大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
3 (略)

<国会答弁>

確かに過去一度だけ、59年5月でございますが、防災行政無線にハイパワーの市民ラジオ等違法な無線機器が妨害を与えまして、これを見るに見かねまして、その機器の製造業者名等を公表したところでございます。その結果は、一定の効果はございまして、幾つか違法な機器を製造あるいは販売している業者の中で自主的に自粛をしたところもございますが、仰せこれは法律的な根拠に基づかない我が行政措置でございましたので、大多数のものはむしろ開き直って、何の根拠でそんなことをやるんだというふうに私どもの方では非常な反発を食らったところでございます。
しかしながら、その後の状況を見ておりますと、やはり依然として重要無線通信に対する妨害が絶えないのみならず、減らないということから、今回新たに基準不適合設備の製造または販売を行う悪質業者については法的根拠を持って公表等の措置をさせていただくような法案を準備させていただいたところでございます。(昭和62年5月26日第108回国会参議院逓信委員会、奥山郵政省電気通信局長答弁)