新旧対照表方式(上)

一部改正例規における新旧対照表方式をどの程度の自治体が採用しているのかについては、kei-zuさんの2007年8月8日付けの記事(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070808)によると、13の自治体(5県6市1町1区)ということである。
私は、この新旧対照表方式についてはあまり関心を持っていないのであるが、以前「自治体の例規審査に関する一考(上)」で引用した片山善博鳥取県知事の発言を検索していたときに、同氏が新旧対照表方式について次のとおり述べているのを見つけた。

とかく条例改正、これは税条例の改正もそうでありますが、改正するときにかぎ、かぎとかいっぱいできてきて、「……」を「……」に改めるというのがいっぱいあるでしょう。何のことかさっぱりわからない。しかしそれを議会に出して、議員の人も何のことかさっぱりわからないけれども可決してしまうという。それで県広報とか皆さんの市の広報に搭載して、だれも見やしない。こういうことが地方分権時代にどういう意味を持つのか。住民の皆さんが主人公のときに、だれもわからない改正条例をつくって、それを議会に提案して、議会の議員さんもほとんど見ることもなく、一瞥もしないでそれが可決されてしまって、そして県民の皆さんに広報する、これは広報も重要なんですけれども、しかし住民の皆さんも見もしないし、だれも関心がない、こういうことで本当にいいのでしょうかと私は思うわけでありまして、こんな愚劣なことはやめようじゃないかということで、ことしから条例の改正というのをあの「……」方式を一切やめてしまいました。
今何をやっているかというと、右を左に改めるという方式にしております。改正前の条例、これをこっちに改めます。右を左に改める、要するに新旧対照をそのまま本文にしてしまった。非常にこれはわかりやすいです。県広報にもそれで搭載します。そうすると何がどう変わったのかが一目瞭然。議員さんも条例改正文を見るようになりました。
したがって、法令改正というのは一部の特殊な専門的知識を持っている人の職人芸のような領域がありましたけれども、これが今だれにでもできるということで、だれでもできる法制執務というのはそういうことであります。
これは非常に評判がいいです。ぜひ皆さん方のところでもやってみられるといいです。法令改正、条例改正というのは何かしち面倒くさい、本当に技術的な、高度な技術を要する分野だと思ってだれも近寄らない、一部の専門的な人がやっている、そういう意識が多分あるのだと思いますが、そんなことは決してありません。実に簡単なものであります。必要なことを必要なだけ書いて改正すればいいわけであります。
従前に比べて字数は多くなります。一部改正で「……」の方が字数は節約できます。しかし今パソコンがあって、一部変えてもすぐすらっと直る時代に、あの字数を節約する方式というのは全く無意味であります。
昔は実は、改正というのは明治維新から始まったわけでありますが、当時はものを書くのが墨でありますから、めったやたらにいっぱい書くというわけにいかないわけです。そうすると字数を何とか節約して法律を改正しなきゃいけないというので編み出されたのがあの一部改正方式なんですね。
その後ガリ版になりました。私なんかが若いころ。それこそ昭和50年代の初めぐらいに自治省で、固定資産税課で仕事をしたときにも、ちゃんと法令改正はガリ版でありました。そのころもやはり字数は制限しなきゃいけませんね。どこか変えたために全部書き直すというのは無理でありますから、ですから一部改正方式というのは非常に有効だったのですが、今のようにOA機器が発達してパソコンで全部処理されるようになりますと、いつでもどこを変えても全部あとはすらっと直してくれる、条ずれとか字のずれは直してくれるという時代になりますと、あの一部改正方式というのはほとんど役に立ちません、無意味であります。
そういうふうに、OA機器の発達、それに応じて法令の改正方式も当然変わるべきところが、その辺が、内閣法制局なんというのは何か神官のような、昔のやり方をずっと守ることが自分たちの生きがいといいますか、職業を守ることにつながっていると私は邪推しているのですけれども、全然ついてきてないのですね。このOA化の時代、情報化の時代についてきてないのが内閣法制局でありまして、そこに一生懸命日参しているのが中央官庁の役人なんです。こんな愚劣なことはやめたらいいと私は思うのですけれども、なかなかやめない。 
この間、内閣法制局長官にその話をしたのです。そうしたら、そういうやり方もあるのでしょうねといってほとんど関心を示されませんでした。時代遅れであります。一生懸命法律を勉強した人が、夜を徹して内閣法制局へ行って本当につまらない仕事をしている、こういう愚劣なことはもうやめるべきであると私は思います。
今、そんなことをしなくてもだれでも簡単に法令改正できるのです。「ワークブック法制執務」といってこんな分厚い本、私も昔読んで勉強しましたが、私も実はその達人なんですけれども、今そんなもの要りません。私のところの法制係長が1枚か2枚の条例改正のやり方というのを書いて、それで全部できるのです。そういう時代になったのですが、相変わらず政府の方ではそういう無駄なことを徹夜をしてやっているという、地方分権時代にはそぐわないやり方をしているということもみんなが気がつくべきであります。((財)資産評価システム研究センターの第4回(平成12年度)固定資産評価研究大会における基調講演、http://www.recpas.or.jp/jigyo/report_web/kenkyu_giji/4th/dai4-001.html

この発言には興味を引かれたのであるが、これを契機に、現時点で新旧対照表方式について感じていることや私なりの考え方を次回以降で整理しておきたい。