新旧対照表方式(下)

新旧対照表方式について、国は公式の見解としては、次のとおり分量が多くなることを問題としている。

内閣法制局におきましては、法令の正確性はもとより、これが国民にとってわかりやすいものとなるよう平素から意を用いているところでございます。また、法令案の作成事務の簡素合理化につきましても努力をしているところでございます。御指摘のいわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、改正点が明確であり、かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、それなりの改善、工夫の努力を経て、我が国における法改正の方法として定着しているものと考えております。
一方、新旧対照表は、現在、改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでございますが、逐語的改正方式をやめて、これを改正法案の本体とすることにつきましては、まず、一般的に新旧対照表は改め文よりも相当に大部となるということが避けられず、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられるということが一つございます。また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもあると考えられます。このようなことから、実際上困難があるものと考えております。
ちなみに一例を申し上げますと、平成11年でございますが、中央省庁等改革関係法施行法という法律がございました。改め文による法律本体は全体で940ページという大部のものでございましたけれども、その新旧対照表は、縮小印刷をさせていただきまして、4,765ページに達しております。これを改め文と同じ1ページ当たりの文字数で換算いたしますと、21,305ページということになりまして、実に改め文の22倍を超える膨大な量となってしまう、こういう現実がございます。(平成14年12月3日第155回国会衆議院総務委員会における横畠裕介内閣法制局総務主幹答弁)

私自身は、一部改正の場合、改正内容が元の法令に溶け込むのだということを前提にするのであれば、やはり改め等方式をとるのが考え方としては素直であると思っている。
そして、形式的な面で一番気になっているのが、現在新旧対照表方式を取り入れている自治体においては、改正がある条全体が新しい規定に置き換わると考えるのではなく、あくまでも改正する部分のみが置き換わると考えていると思われるが、そのように考えると、改正に関係ない部分(下線が引かれない部分)は余事記載ということになり、この公文書に余事記載があるという点である。さらに、複数の項がある条を改正する場合に、改正がない項は「略」といった表記をして、書くのを省略するケースがあると思うが、この「略」というのは、公文書として見た場合には何なのだろうかと思ってしまう。
ただ、各自治体が適当であるとの判断で新旧対照表方式を取り入れるのであれば、それも一つの考え方だと思っている。
そこで、私的な新旧対照表方式の一つの形式の提示等を含め、詳細は改めて記載することとしたい。