例規の立案で間違いやすい例(2)

施行期日を定める規定には、案外落とし穴があります。
定番なのは、一部改正の例規において遡及適用を定めるときに、「この条例は、平成20年1月1日から施行し、平成19年4月1日から施行する。」としてしまうことです。これは法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P571)等でも取り上げられていますが、法令でも時々見かけます。
その他、私が結構チェックし忘れた例として、次の例があります。

○○条例
(略)
附 則
この条例は、平成19年4月1日から施行する。ただし、第○条の規定は、平成19年10月1日から施行する。

正解は、「平成19年10月1日」→「同年10月1日」
「同」の用法については、なぜか施行期日の規定のところだけよく見逃しがちでした。まあ、実害はないからまだ良いのですが。
また、ある自治体の例規で、次のような例がありました。

○○条例の一部を改正する条例
(略)
附 則
この条例は、平成19年4月1日から施行する。ただし、○○の改正規定は、同年4月30日から施行する。

惜しい。「同年4月30日」→「同月30日」とすべきでしょう。
ちなみに、最近話題のいわゆる「ブリッジ(つなぎ)法案」(「所得税法等の一部を改正する法律案に係るもの)に、次のような規定があります。

国民生活等の混乱を回避し、予算の円滑な執行等に資するための租税特別措置法の一部を改正する法律案
附 則
所得税法等の一部を改正する法律の一部改正)
第2条 所得税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第 号)の一部を次のように改正する。
(略)
附則第1条中「平成20年4月1日」の下に「(この法律の公布の日が同月1日後となる場合には、公布の日)」を加える。

この規定が溶け込むと、次のようになります。

所得税法等の一部を改正する法律案
附 則
(施行期日)
第1条 この法律は、平成20年4月1日(この法律の公布の日が同月1日後となる場合には、公布の日)から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

一瞬「同月1日」は「同日」でいいのではないかと思ったのですが、「同日」だと「この法律の公布の日」を指してしまうので、これでいいわけですね。
なお、施行日を書き分ける場合、上記のように本文・ただし書で書くのではなく、各号ですべて書く場合もありますが、次のような例がありました。

○○条例の一部を改正する条例
第2条中「A」を「B」に改める。
第3条中「C」を「D」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、次の各号に掲げる規定ごとに、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
(1) 第2条の改正規定 平成19年4月30日
(2) 第3条の改正規定 平成19年10月1日
(経過措置)
2 (略)

条例なので形式的には間違いではないのですが、これだと附則第2項は公布の日から起算して10日を経過した日からの施行となってしまいますね(地方自治法第16条第3項)。規則だと形式的にもアウトです。
私は、このような施行期日の書き方をしたことがないのですが、上記のようなミスを防ぐためにも、本文・ただし書で書くようにした方がいいのではないかと思っています。