2008年5月24日付けの記事「法令で委任された事項を定める例規〜次世代育成支援対策推進法施行令第2項」に関する追記(その3)

次の記事の続編になります。

今回も安房さんからいただいたコメントに対する意見を記載しますが、まず対象となっている書きぶりを次に記載しておきます。なお、ゴシックの部分は、6月8日付けの記事で適当でない旨を記載していますが、ここではそのまま記載しておきます。

次世代育成支援対策推進法施行令(平成15年政令第372号)第2項の地方公共団体の機関、その長又はその職員で規則で定めるもの(以下「特定事業主」という。)は、次の表の左欄に掲げる特定事業主とし、同項の規則で定める職員は、同表の左欄に掲げる特定事業主についてそれぞれ同表の右欄に掲げる職員とする。

<コメント1>

主語の部分ですが、「次世代育成支援対策推進法施行令(平成15年政令第372号)第2項の規則で定める機関、その長又はその職員」と書く手もありそうですが、どうでしょうか(なお、この書き方の場合は、「地方公共団体の」という文言は、自分の規則で書いているので、いらない感じがします。)

このような書き方をした場合には、「その長又はその職員」の「その」は「機関」を指すと考えることになるのでしょうが、これは「地方公共団体」を指すと考えるべきではないでしょうか。
つまり、地方公共団体の機関等のうち教育委員会と警視総監又は道府県警察本部長は政令で定められており、規則で定めることを想定しているものは、これらの機関等以外の任命権者を想定していることからすると、規則で首長を定めることになるのですが、これは「地方公共団体の機関の長」ではなく、「地方公共団体の長」と考えるべきではないでしょうか。
さらに、法律の表記は、「国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員」というように「それら」としています。仮に「機関」を指すのであれば、この場合でも「その」で足りると思います。
このように考えると、「地方公共団体」は省略できないでしょう。
また、「地方公共団体の」という文言は自分の規則で書くのだからいらないのではと言われていますが、私は、法令等の委任を受けて「……第○条の(に規定する)△△」と書く場合の「△△」は、当該法令等の文言をできる限り忠実にそのまま記載するようにすればいいのではないかと考えています。
ただし、ここで対象としている書きぶりは、忠実さに欠ける面はあります。もし忠実に書くのであれば、「次世代育成支援対策推進法施行令……第2項の規定により規則で定めるものとされる地方公共団体の機関、その長又はその職員(以下「特定事業主」という。)は、……」といった書き方になるでしょう。しかし、政令の書きぶりなどを勘案してこのような書き方をしているものだと理解してください。
<コメント2>

「同表の左欄に」は「同欄に」でいいように思いますが。

今回私は、この点について深くは考えていません。5月24日付けの記事で記載していますが、参考にした地方公共団体の手数料の標準に関する政令の書き方を参考にしているだけです。
もちろん、「同欄」でいいのではないかと言われれば、法令に用例もあり、よいのではないかと思います。むしろ、今後はそのような書き方に統一されていくのかもしれません。
しかし、現段階では、書き方が統一されているわけではないでしょう。最近の法令でも、障害者自立支援法施行令(平成18年政令第10号)第2条は、次のようになっています。

(法第七条の政令で定める給付等)
第2条 法第7条の政令で定める給付は、次の表の上欄に掲げるものとし、同条の政令で定める限度は、同表の上欄に掲げる給付につき、それぞれ、同表の下欄に掲げる限度とする。

もちろん、ミスである可能性もあるでしょうが、同じ厚生労働省政令で、介護保険法施行令(平成10年12月24日政令第412号)第11条も同様の書き方をしており*1、むしろこうした類似の規定を参考にしているのではないかと思います*2
余談ですが、「同」の用法は多分にローカルルールによっている面があるように思います。例えば「第○条第△号イ」を重ねて書く場合、法令では「同号イ」とするのでしょうが、「同イ」とするのがいけないかと言われれば、別に問題はないでしょう。
「同欄」の場合は、法令に用例もあることからローカルルールということではないでしょうが、それぞれの団体でルールを決めればいいのであり、必ず「同欄」にしなければいけないというものでは今のところはないのではないかというのが私の考えです。

*1:介護保険法施行令第11条は、「法第20条に規定する政令で定める給付は、次の表の上欄に掲げるものとし、同条に規定する政令で定める限度は、同表の上欄に掲げる給付につき、それぞれ、同表の下欄に掲げる限度とする。」としている。

*2:なお、手数料については、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(昭和59年政令第319号)第10条の2が「法第20条第8項の政令で定める者は、次の表の上欄に掲げる者とし、同項の政令で定める額は、同表の上欄に掲げる者について、同表の中欄に掲げる区分に従い、それぞれ同表の下欄に定める額とする。」という書き方をしており、地方公共団体の手数料の標準に関する政令もこうした類似分野の規定を参考にしているようにも思えます。