新旧対照表方式〜導入自治体の意見から

新旧対照表方式については、以前まとめて取り上げたことがあったのですが、洋々亭さんのサイト(http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/yybbs/)で新旧対照表方式について議論されており、そのなかで、既にこの方式を導入している自治体の職員の方の意見があったので、それを取り上げてみます。

(その1)
ウチの市は、数年前から導入しております。
新旧対照表方式は、文量の多さやパソコン操作の難解さなど、いくつかのデメリットがありますが、最大の難敵は、やはり「ルールは自分たちで作る」という点でしょうか。例規の改正にはさまざまなパターンがあり、それを当初からすべてパターン化することはかなり難しいです。
そのつど、自分たちでルールを定めるのですが・・・「改め文方式」の懐の深さを痛感してます。
ただ、法規担当以外の職員や議員には好評です。やっぱり分かりやすいみたいですね。それに尽きます。
法規の専門家ほど、新旧対照表方式には難色を示すという傾向があるようです。
法規担当が苦労すれば、他の人たちが楽になる。みたいな印象です。

改め文方式」の懐の深さを痛感しているという点については、両者の歴史が違うので、当然と言えば当然でしょう。法令でも昔の改め文を見ると、結構おもしろいものもあります(機会があれば取り上げてみたいと思っています)。
新旧対照表方式のメリットとしては、職員と議員にとって分かりやすいということを述べておられますが、それに関する私の意見は、2008年3月1日付け記事「続・新旧対照表方式(3)〜メリット・デメリット(その3)」で記載したとおりであり、特に考え方を変えていません。
なお、法規の専門家ほど、新旧対照表方式には難色を示すという傾向があるとありますが、これは正確ではないように感じます。例えば、内閣法制局第一部長である山本庸幸氏は、その著書『実務立法技術』(P401〜)で、新旧対照表方式について肯定的な見解を述べておられます。確かに、例規の改正を経験すると、それは改め等方式で行うものだと思い込みがちであるとは言えると思います。

(その2)
本町でも新旧対照表方式を導入しています。
私が知る限りこの方式なので、結構前から導入されているようです。
近隣の町村も大多数がこの方式です。
メリットは既に書かれているようなことですね。
デメリットとしてあげられやすいのが、やっぱり表や様式の改正などです。
簡単なものなどは、新旧対照表の中に入れ込んでの改正となりますが、複雑なものなんかは必要に応じて改め文形式を使うなどして乗り切っています。

近隣の町村も大多数がこの方式であるとあるので、新旧対照表方式を取り入れている自治体は結構の数になるのかもしれません。
なお、表や様式の改正について、改め等方式を併用しているとありますが、その場合は、使い分けの基準をどのようにするか考える必要があるでしょう。なお、2008年3月14日付け記事「続・新旧対照表方式(6)〜別表の改正と改め文の位置」参照。

(その3)
自治体でも新旧対照表方式を導入しています。
賛否はあると思いますが、先日自治体法務を研究している先生とお話しさせていただいたときに、住民に目が向いているかどうかがポイントだと。
法規としては改め文方式が確かに体裁としてはきっちりしています。
しかし、それは住民の視線で見てみたときにわかりますか??ということでした。
法規担当者を中心に考えたら、改め文方式が採用されると思いますけども、住民から理解されないような改正文って意味があるのかな??と自治体職員として思います。
また、職員が減って行く中で、時間を削れるところは削って、すこし負担を減らしてもいいのではないでしょうか?

ここでは、住民の視線ということが述べられています。住民の視線を意識することは大切なことだと思いますが、2008年3月1日付け記事「続・新旧対照表方式(3)〜メリット・デメリット(その3)」でも記載したとおり、新旧対照表方式が本当に住民のためのものと言えるのか私は疑問を持っています。つまり、例規の改正で溶け込み方式を前提にするのであれば、重要なのはあくまでも改正後の例規であって、その過程である一部改正例規そのものについて分かりやすさを強調してみても、それ程意味があることではないのではないかと感じています。この方式を取り入れている自治体の方からは、ぜひこの点について住民の方がどのように言っているのかお聞きしたいと思います。
もちろん、現行の改め等方式について、いろいろな意見もあるでしょう。したがって、その方式を改めることについて特に否定するつもりはありません。そして、上記記事でも触れていますが、私は、新旧対照表方式にそれ程のメリットがあるとは考えていませんが、だからと言って決定的なデメリットがあるとも思っていませんので、この方式を導入するのは、それぞれの自治体の自由だと思っています。しかし、それが例規の一部改正を目的とする手法である以上、確実に意図したとおりの改正がなされるかの検証は十分行う必要があるでしょう。例えば簡単な改正文と新旧対照表を載せるだけ済むと考えているのであれば、問題があるのではないでしょうか。
(参考)過去に新旧対照表について記載した記事