用字等の表記の一括改正(上)

少し前になりますが、kei-zuさん(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20080905)とwashitaさん(http://d.hatena.ne.jp/washita/20080905)が岩手県法規案立案マニュアルについて取り上げられていましたが、この中で用字等の表記を一括して改めたことが記載されており、以前取り上げたこともあり(2008年7月25日付け記事「例規集の改廃に伴う例規の整理とは」)、このことについて記載してみます。なお、このマニュアルには、新旧対照表による改正方式などについて記載されており、また改めて取り上げてみようと思っています。
岩手県では、平成17年に例規の用字等の表記について、例規の形式ごとに整備する例規を定めている。そのうち、条例の全体的な体裁は、次のようなものになっている*1

条例の用字等の表記の整備に関する条例(平成17年岩手県条例第47号)
(趣旨)
第1条 この条例は、この条例の施行の際現に公布されている条例(次条第1項において「条例」という。)の用字等の表記の整備に関し必要な事項を定めるものとする。
(用字等の表記の整備)
第2条 他の条例中、次の表の左欄に掲げるものは、それぞれ同表の右欄に掲げるものに改める。
   (表の内容は後掲)
2 前項(同項の表10の項に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、次の表の左欄に掲げる条例の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の右欄に掲げる字句に改める。
   (表略)
(適用除外)
第3条 前条第1項の規定は、法令を引用する部分その他同項の規定によることが適当でないと認められる部分で知事が別に定めるものについては、適用しない。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。

用字等の表記の改正は第2条第1項に表を設けて行っているわけだが、具体的な内容は次のとおりである。

  • よう音として用いられている「や」、「ゆ」、「よ」、「ヤ」又は「ヨ」 → それぞれ「ゃ」、「ゅ」、「ょ」、「ャ」又は「ョ」
  • 促音として用いられている「つ」又は「ツ」 → それぞれ「っ」又は「ッ」
  • 動詞「行なう」の語幹「行な」 → 「行」
  • 動詞「基く」の語幹「基」 → 「基づ」
  • 動詞「こえる」の語幹「こえ」 → 「超え」
  • 動詞「因る」の語幹「因」 → 「よ」
  • 「に定が」、「に定の」、「の定が」又は「の定の」 → それぞれ「に定めが」、「に定めの」、「の定めが」又は「の定めの」
  • すみやかに → 速やかに
  • 「但し」又は「但書」 → それぞれ「ただし」又は「ただし書」
  • 「外」(直前に掲げるもの以外の意味で用いられている場合に限る。) → 「ほか」
  • 各号の一 → 各号のいずれか
  • 「本」(当該「本」が用いられている節、条、項又は号を示す意味で用いられている場合に限る。)→ 「この」
  • かぎ括弧として用いられている「 (縦書きの鍵括弧とじ)」又は「(縦書きの鍵括弧) 」 → それぞれ「「」又は「」」

このような改正方法については、いろいろ意見はあると思うが、私は、2008年7月25日付け記事「例規集の改廃に伴う例規の整理とは」でも記載したように、必ずしも否定はするつもりはない。そして、上記の岩手県の手法は、このような改正を考えるのであれば、参考とする事例と考えてよいのではないかと思う。
ただ、条例としての体裁が整っていると、以前は気が付かなかったことで気になることも出てくるものである。それは、通常は現存する条例の中にも実質的な効力を失ったものなどが相当数あるものであり、そのような条例を廃止していなければ、そうした条例も含めてこのような改正を行うことは、いかがなものだろうかということである。もし、用字等の表記の整備をしたいのであれば、やはり条例の実質的な内容の改正があるときに、その条例の改正の中でその条例に限って行ったほうがいいように感じる。

*1:条例の全文については、岩手県法規集を参照