「Aその他のBであってC」の略称(下)

(「Aその他のBであってC」の略称の具体例の続き)
5 「特定○○」、「指定○○」、「対象○○」とする例(大島稔彦『法令起案マニュアル』(P201)(「『Aその他のBであってC』の略称(上)」参照)第6に該当)
 (1) 「A」の用語を用いる例

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第1項各号(第9号及び第14号を除く。)に掲げる有価証券(同項第1号から第8号まで、第10号から第13号まで及び第15号から第21号までに掲げる有価証券に表示されるべき権利であって同条第2項の規定により有価証券とみなされるものを含む。)のうち社債その他の事業者の資金調達に資するものとして政令で定めるもの」→「指定有価証券

  • 工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(平成2年法律第30号)第4条第1項

「特許等関係法令の規定による処分若しくは判定又は審判に関する記録その他の特許等関係法令の規定により文書をもって行うものとされている行為であって経済産業省令で定めるもの」→「特定処分等

「発電用原子炉に係る格納容器その他の経済産業省令で定める機械若しくは器具である電気工作物(以下「格納容器等」という。)であつて溶接をするもの」→「特定格納容器等

  • 沖縄振興特別措置法(平成14年法律第14号)第3条第7号(定義)

情報通信産業に属する事業のうち、情報の電磁的流通(符号、音響、影像その他の情報の電磁的方式による発信、伝送又は受信をいう。)の円滑化に資する事業、情報処理の高度化を支援する事業その他の企業等の経営の能率及び生産性の向上を図る事業であって、その事業を実施する企業の立地を図ることが情報通信産業の集積を特に促進するものとして政令で定めるもの」→「特定情報通信事業
 (2) 「B」の用語を用いる例

  • ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)第2条第2項(定義)

「工場又は事業場に設置される施設のうち、製鋼の用に供する電気炉、廃棄物焼却炉その他の施設であって、ダイオキシン類を発生し及び大気中に排出し、又はこれを含む汚水若しくは廃液を排出する施設で政令で定めるもの」→「特定施設

  • 鉱山保安法(昭和24年法律第70号)第13条第1項

「鉱業上使用する建設物、工作物その他の施設であつて保安の確保上重要なものとして経済産業省令で定めるもの」→「特定施設

  • 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号)第33条

「窒素酸化物排出自動車、粒子状物質排出自動車その他の窒素酸化物対策地域内又は粒子状物質対策地域内に使用の本拠の位置を有する自動車であって、政令で定めるもの」→「対象自動車

「人の体内に植え込む方法で用いられる医療機器その他の医療を提供する施設以外において用いられることが想定されている医療機器であつて保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するためにその所在が把握されている必要があるものとして厚生労働大臣が指定する医療機器」→「特定医療機器
 (3) 「B」と「C」の用語を用いる例

「ドライバー、バールその他の工具(特殊開錠用具に該当するものを除く。)であって、建物錠を破壊するため又は建物の出入口若しくは窓の戸を破るために用いられるもののうち、建物への侵入の用に供されるおそれが大きいものとして政令で定めるもの」→「指定侵入工具
 (4) その団体に行わせる業務を組み合わせる例

「事業主の団体若しくはその連合団体又は一般社団法人若しくは一般財団法人、法人である労働組合その他の営利を目的としない法人であつて、次の各号のいずれにも適合していると認めるものとしてその指定する者」→「指定試験機関

(参考)
   職業能力開発促進法
第47条 厚生労働大臣は、厚生労働省令で定めるところにより、事業主の団体若しくはその連合団体又は一般社団法人若しくは一般財団法人、法人である労働組合その他の営利を目的としない法人であつて、次の各号のいずれにも適合していると認めるものとしてその指定する者(以下「指定試験機関」という。)に、技能検定試験に関する業務のうち、前条第2項の規定により都道府県知事が行うもの以外のもの(合格の決定に関するものを除く。以下「試験業務」という。)の全部又は一部を行わせることができる。
(1)・(2) (略)
2〜4 (略)

「法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの」→「指定管理者

(参考)
   地方自治法
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第244条の2 (略)
2 (略)
3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第244条の4において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
4〜11 (略)

6 その他

  • 発達障害者支援法(平成16年法律第167号)第14条第1項

社会福祉法人その他の政令で定める法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者」→「発達障害者支援センター
7 まとめ
「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律」第3条第4項の原案であった「A等」とする事例は相当するあるが(「『Aその他のBであってC』の略称(中)」参照)、「Aその他のB」とする事例は、見当たらなかった。
もちろん、略称は、それが表す文言を適切に表現するものであればよいのであろうが、「Aその他のB」とした場合には、「Aその他のBであってC」という文言の「であってC」という部分のみを切り取ってしまうことが、その用語の略称としては適切でないという感じがしないでもない。
私自身は、略称をどのようなものにするかについて特別のこだわりはないのだが、以前どうしても特別の用語にしたいという意見があって、原案作成の段階でそのように修正したことがある。この例もその程度のことなのだろうか。