一部改正例規の立案の際の用例検索

例規の一部改正の方法については、国の法律・政令のそれに準じて行っている自治体が一般的であろう。そして、そうした自治体では、仮に議会等で条例等に関連して一部改正の方法について質問がなされた場合においても*1、次のような答弁をすれば足りることになる。

自治体における条例の改正方法については、従来から国における法令の改正方法に準じて行ってきているところであります。本件については、法令では○○○という事例がありますので、それを参考にして立案したところであります。

したがって、一部改正の例規の立案においても、法令における用例の検索は、重要であり、また例規の電子化により容易になってきているのであるが、適切な語句で検索をしないとあまりにも多くの事例がヒットしてしまうという点で、条文の規定例の検索の場合以上にある程度のこつが必要になってくる。
検索語を掲げている文献としては、大島稔彦『法令起案マニュアル』などがあるが、一部改正の法令の検索の仕方について参考になるような文献は私は見たことがない。
そこで、一部改正の法令の検索について、2009年11月20日付け記事「改正規定の特定の仕方〜条の移動と追加が混在する事例」を記載する際に、私が行った検索の事例が一つの参考になるのではないかと思い、ここに紹介してみることにする。
利用したサイトは、衆議院のホームページである。
今回は、「第○条を第×条とし、同条の次に1条を加える」という改正規定について、「第○条を第×条とする改正規定」と「第×条の次に1条を加える改正規定」という形で分割して特定している事例があるかどうかを確認することが主眼であったため、私が検索するために入力した語句は、「条の次に一条*2を加える改正規定」というものであった。その結果、「制定法律」のカテゴリでは269件ヒットした。269件すべてを確認しようとすると結構大変になるが、比較的新しいものに限れば件数は限られてくる。私は、公布日が平成のものを確認していった。
そうすると、まず「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)」が目に付いた。そして、「沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律(平成10年法律第21号)」を見つけたところで、それ以上確認することはあまり意味がないと思い、検索は止めている。
この作業に要した時間は数10分程度なので、時間的には許容範囲なのではないだろうか。
しかし、単に適当な用例を探すということであれば、この作業時間はもっと短縮することができる。それには、ある程度用例を想定することが必要になるのであるが、今回の例で私がイメージしていたのは、「第○条を第×条とし、同条の次に1条を加える改正規定(同条の次に1条を加える部分に限る。)」というものであった*3。そうすると、「条の次に一条を加える改正規定(」というように括弧を入れて検索をすることができる。ちなみに、それで検索してみると、同じく「制定法律」のカテゴリで14件しかヒットしないので、確認は容易になるし、その中で適当な用例があれば、それで作業は終わる。10分もかからないだろう。
ところで、実際の法令における用例は、平成10年法律第21号では「……(同条の次に1条を加える部分に限る。)」ではなく、「……(第○条を第×条とする部分を除く。)」というものであったのだが、上記の14件の中にあった他の2、3件の類似事例は、いずれも同じであった。これは、法令の書き方の方が文字数が少ないため、合理的だということだろうか。
最後にまとめると、今回の検索で個人的にポイントと思う点は2点ある。
1点目は、検索する語句を「条の次に一条を加える改正規定」とした点に関してである。つまり、追加する条は1条ではなく複数の条でもよいわけで、そのような場合まで幅広く拾うのであれば、「条の次に」かつ「条を加える改正規定」というように検索するのであろうが、ヒットする件数を少なくしようとするのであれば、できる限り長い語句で検索するべきであるということは自明であろう。
2点目は、かっこ等があれば、それを含めて検索するほうが、よりヒット件数を絞ることができるということである。
ただし、一部改正事案の場合は、ほとんど検索が不可能な場合もある。したがって、日々官報等を確認し、使えそうな用例は、メモをしておくということは、なお大切なのであろう。

*1:そのようなことはほとんどないのかもしれないが

*2:漢数字とすることに留意する必要がある。

*3:そのため、平成19年法律第21号を見たときは、結構意外に思ったのである。