ある自治体の条例における認証の仕組み(上)

今回から3回にわたって、「自治体法務研究」で紹介されていた某市の「ふれあい安心名簿条例」(以下次回も含めて単に「条例」というときは、この条例を指すものとする。)を取り上げる。
この条例は、個人情報に過剰に反応するあまり、学校その他の地域団体で必要な名簿が作成されないことを防ぐため、一定のルールに基づき作成された名簿を市が認証することによって、個人情報を保護するとともに、必要な名簿の作成を促進するために制定されたものである。
私は、この条例は先進的な取組の一つであり、参考にすることができるものであると思っている。しかし、特にその構成が原因と思われるが、やや分かりにくいものとなってしまっており、事実そのような意見もあるとのことである。
この条例は、どの自治体のものであるか容易に特定されてしまうので、ここで取り上げるのは本意ではないが、上記のとおり、一般住民からのものと思われるが、分かりにくいという意見もあることから、このような書き方もあるのではないかという参考意見を提示してみたい。
条例の本体的な規定は、次のとおりである。

(作成及び利用の規約)
第6条 認証記号を付そうとするふれあい安心名簿作成者は、名簿情報の収集その他この条例に定める基準に基づきふれあい安心名簿を作成し、及び利用するために必要な手続等を定めた規約を作成しなければならない。
2・3 (略)
(名簿情報の収集の基準)
第7条 ふれあい安心名簿作成者は、ふれあい安心名簿を作成しようとするときは、ふれあい安心名簿登載者に対し、ふれあい安心名簿の利用目的に必要な名簿情報の提供について協力を求めることができる。
2 ふれあい安心名簿作成者は、前項の協力を求めようとするときは、ふれあい安心名簿の利用目的、記載する名簿情報の項目及びふれあい安心名簿の配付先を定め、あらかじめふれあい安心名簿登載者に知らせなければならない。
3 ふれあい安心名簿作成者は、ふれあい安心名簿に名簿情報を記載することについてふれあい安心名簿登載者から同意を得た上で、名簿情報を収集しなければならない。
4 ふれあい安心名簿作成者は、当該ふれあい安心名簿の利用目的に必要な名簿情報以外の情報を収集してはならない。
(ふれあい安心名簿管理者の設置)
第8条 ふれあい安心名簿作成者は、ふれあい安心名簿登載者の中からふれあい安心名簿管理者を選任しなければならない。
2 ふれあい安心名簿管理者は、ふれあい安心名簿登載者から名簿情報の取扱いに関する問合せや相談等があったときは、当該ふれあい安心名簿登載者に必要な助言等を行うものとする。
3 ふれあい安心名簿作成者は、作成したふれあい安心名簿に、ふれあい安心名簿管理者の氏名及び連絡先を記載しなければならない。
(認証の申請手続等)
第9条 認証記号を付そうとするふれあい安心名簿作成者は、ふれあい安心名簿の内容が確定したときは、市長に名簿情報を収集した経過の分かる書類を提示し、ふれあい安心名簿の認証を申請しなければならない。
2 市長は、前項の申請があったときは、当該ふれあい安心名簿の作成手続がこの条例の基準に適合するかどうかを確認し、適合すると認めるときは、ふれあい安心名簿に認証するものとする。
3 市長は、前項の認証をしたときは、番号を付した認証記号を交付するとともに、認証記号交付簿に必要な事項を記録するものとする。
4〜6 (略)

上記の規定は、時系列を重視して書かれており、もちろん、このような書き方をする例もある。さらに、このような書き方をしたのは、たとえ認証を得ないにしても、できる限り条例に定める手続を参考にして名簿を作成して欲しいという意図があってのことであるのかもしれない。
しかし、その結果、一番重要な規定である認証の規定が後の方の第9条に規定されてしまっている。上記の一般住民と思われる者からの意見は、条例は市の認証を受けようとしない名簿であっても団体の独自の方法で作成・利用することを許容しているのだが、そのことが分かりにくいというものであるようだが、それは、認証を得るための名簿の作成の手続から規定していることによるのではないかと思う。
では、どのようにすれば分かりやすくなるかについて、次回に一つの案を提示することとしたい。