専門委員の共同設置

前回まで2回にわたり、平成23年法律第35号による地方自治法の改正により行うことができるようになった行政機関等の共同設置について取り上げたが、この改正により、議会にも地方自治法第174条第1項に規定する専門委員を共同設置することができるか議論されていることを、kei-zuさんが取り上げていらっしゃる。
根拠規定である改正後の地方自治法第252条の7の規定は、次のとおりである。

(機関等の共同設置)
第252条の7 普通地方公共団体は、協議により規約を定め、共同して、第138条第1項若しくは第2項に規定する事務局若しくはその内部組織(次項及び第252条の13において「議会事務局」という。)、第138条の4第1項に規定する委員会若しくは委員、同条第3項に規定する附属機関、第156条第1項に規定する行政機関、第158条第1項に規定する内部組織、委員会若しくは委員の事務局若しくはその内部組織(次項及び第252条の13において「委員会事務局」という。)、普通地方公共団体の議会、長、委員会若しくは委員の事務を補助する職員又は第174条第1項に規定する専門委員を置くことができる。ただし、政令で定める委員会については、この限りでない。
2・3 (略)

議会に専門委員を共同設置することができるかという点については、この規定の文理からは導くことができず、やはり否定的に解すべきだろう。
ところで、kei-zuさんは、複数の自治体の議会が、地方自治法第100条の2の規定により、同一の学識経験者に調査をさせることにより、結果的に共同設置に準じた運用を行うことが可能であると指摘されている。
これはまさしくそのとおりなのだが、同様な運用は、執行機関の専門委員でも可能であろう。つまり、地方自治法第174条第1項に規定する専門委員は、非常勤の職であり(同条第4項)、特別職に属すると解されている(地方公務員法第3条第3項第2号)。したがって、専門委員の身分取扱いは、地方公務員法が適用されず、地方自治法附則第9条の規定に基づく政令である地方自治法施行規程の適用がある(以上、松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P540〜)参照)。具体的には、専門委員の服務については、都道府県のそれは同令第33条、市町村のそれは同令第38条に規定があるが、いずれも給料又は報酬を受ける他の事務を行うことを妨げないとされている。
よって、同一の者が複数の自治体の専門委員となることも問題がないことになる。そうすると、専門委員の共同設置が可能になったといっても、あまり意味がないことになるのではないだろうか。