地域主権改革一括法を受けた条例の規定内容〜目的規定を中心にして(下)

このシリーズの最後に、小泉祐一郎『地域主権改革一括法の解説』における児童福祉条例試案(前掲書(P293〜))を取り上げておくことにする。
条例試案における目的規定は、児童福祉法第1条の理念規定を参考としているが、その規定は、次のとおりである。

(児童福祉の理念)
第1条 すべての国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるように努めなければならない。
2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

そして、条例試案の目的規定を次のようにしている。

(目的)
第1条 この条例は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されるとともに、すべての児童がひとしくその生活を保障され、愛護されるよう必要な措置を講じ、もって児童福祉の増進を図ることを目的とする。

そもそも条例の目的規定を書こうとするときに、法律の理念規定を参考にしようとすることに無理があると思う。そして、条例試案の内容は、施設の基準がほとんどであるため、そのような条例に上記のような目的規定は、甚だ不釣合いである。
目的規定を書く場合には、当然その条例の内容を意識したものとする必要があるが、その内容に関係なく、法律の規定から何か目的規定となりそうな事項を抜き出しているだけであるため、このようなことになってしまうのだろう。
そして、条例そのものも、この程度のことしか書けないのであれば、とりあえず法施行条例として割り切るべきである。
私は、著者のことはほとんど存じ上げないが、あまり立法経験が豊富なのではないのではないかと感じる。以前(2010年3月19日付け記事「目的規定〜公文書管理条例」)記載したことがあるが、立法経験がない方が無理をして条文の案を書くことは止めた方がいいのではないかと思う。参考になる記載がある著書についてそのようなことがあると、一層残念に感じてしまう。