「です・ます調」の条例

このブログは、個人的に「です・ます調」の方が適当と思うときは、そのようにしている。今回も、感覚的には「です・ます調」にしたいところだが、あえて「である調」で書くことにする。

いじめ防止条例 地域あげて許しません
子どものいじめを防ごう−。その一点に的を絞った条例が岐阜県可児市にできました。学校任せでなく市や親、住民ら地域全体で問題に取り組む。そういう決意が、今は全国に必要なのです。
この全国でも珍しい条例は、いわゆる、です・ます調で書かれています。子どものみなさんにも読みやすいようにです。この社説もそうしました。みなさんに、ぜひ読んでほしいからです。
文部科学省が調べた数字を紹介します。
大津市の中2男子の自殺を受けた緊急調査で、この半年間に全国の小中高校から報告があったいじめの件数は7万5,000件を超え、昨年度の1年分を上回ってしまいました。この中に、命にかかわるような重大ないじめは約250件もあります。
可児市の「子どものいじめの防止に関する条例」は、市議会の全員一致で決まりました。
条例では、市をはじめ、学校、親、市民・事業者など、いじめ問題へのそれぞれの責任を明記して連携による防止活動を強く求めています。
たとえば親には、いじめは許されない行為だと子に十分にわからせるよう努めてください、と。住民には、子を見守り声をかけ、安心して過ごせる場をつくるよう努めてください、いじめを見つけたらすぐに学校や市などに知らせてください、と。
要するに、そんな内容です。
問題の解決に向けた調整役の第三者による「いじめ防止専門委員会」をつくることも決めました。けれど、その委員会は公開されないといいます。情報をどう共有し、地域全体での取り組みにどう生かすのでしょうか。課題は残るかもしれません。
冨田成輝市長は2年前、初当選したとき、いじめ防止を公約に掲げました。可児市ではその年、中学1年の女子生徒が上級生5人のいじめを受け、裸の写真を撮られる事件がありました。市をあげて取り組もうと条例の案は市長部局が作りました。
「自分が他の人からやられて嫌なことは、やるな」
これが、いじめに立ち向かう基本的姿勢でしょう。大切なのは、どう実現させていくか。条例は地域のみんなで実行していくことにしたのです。中でも親や市民の責務に踏み込んだ意義は大きい
大人は、そんなふうに考えています。みなさんは、どんどん相談に来てください。
中日新聞 2012年10月3日付け社説

「です・ます調」の条例も、今はそれ程話題になるようなことではないのかもしれないが、「です・ます調」にする趣旨は、一般的には社説にあるように、読みやすくして多くの人に読んで欲しいということなのであろう。
そうであれば、上記条例(可児市子どものいじめの防止に関する条例)では、基本理念や責務規定のように子どもを含めた市民を対象にした規定については、意味がないとまでは言わない。しかし、条例には、附属機関と考えているのだろうが「いじめ防止専門委員会」の規定があり、この規定は「です・ます調」にしても全く意味がない。
結局のところ、読んで欲しいのは、上記の基本理念などの規定、それからいじめがあったときの是正要請*1を含めた手続的な部分ではなかろうか。そうすると、例えば「である調」とすることが適切な部分は、別の条例にするということも考えてもよかったのである。
思うに、条例は、住民や行政などが従うべきルールを定めるものである。そして、条例は、一般的に「である調」で書くことがルールになっている。そうすると、自分でルールを破って他者にルールに従えというのは、自分勝手な理屈だろう。
実際問題としても「です・ます調」にすると冗長になるし、うまく書けない場合がある。上記社説の太字部分がいい例である。
さらに、新聞も一般的には「である調」になっているが、多くの人に読んで欲しくないということだろうか。ルールを変えると、こうした論理矛盾が起きやすいのである。

*1:ただし、是正要請の規定(条例第14条)は、是正要請をすることについて市長にどの程度の裁量があるのか分からなくなってしまっており、「です・ます調」ゆえの不適切な表現になっていると思われる。