どこまで合理的な改め文とするか

一般的に例規の改正は、できるだけ合理的に行うこととし、改め文は、できるだけ短いものとすべきものとされている。
ところで、次のような改め文がある。

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第53号)
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部改正)
第1条 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の一部を次のように改正する。
    (略)
第42条第1項中「並びに第15条第1項」を「 、第15条第1項」に、「同条第3項及び第4項」を「同条第4項及び第5項」に改め、「規定する事務」の下に「並びに第30条の11第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第3項及び第4項に規定する事務」を加え、同条第3項中……に改める。

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」第42条の規定は、同法に規定された公安委員会の事務について、警視総監又は道府県警察本部長に委任することを許容する規定である。
上記の第42条の改正は、引用している条項の移動に伴う改正と新たに追加された事務を委任する改正であり、その新旧対照表は、次のようになる。

公安委員会の事務の委任)
第42条  公安委員会は、仮の命令に関する事務、第12条の4第2項の規定による指示(緊急の必要がある場合におけるものに限る。)に関する事務、第15条第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第4項及び第5項に規定する事務並びに第30条の11第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第3項及び第4項に規定する事務を警視総監又は道府県警察本部長に行わせることができる。
2・3 (略)
公安委員会の事務の委任)
第42条  公安委員会は、仮の命令に関する事務、第12条の4第2項の規定による指示(緊急の必要がある場合におけるものに限る。)に関する事務並びに第15条第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第3項及び第4項に規定する事務を警視総監又は道府県警察本部長に行わせることができる。
2・3 (略)
しかし、上記の改め文は、次のようにするとさらに合理的になる。

第42条第1項中「並びに第15条第1項」を「、第15条第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第4項及び第5項に規定する事務並びに第30条の11第1項」に改め、同条第3項中……に改める。

この改め部文に係る新旧対照表は、次のとおりとなる。

公安委員会の事務の委任)
第42条  公安委員会は、仮の命令に関する事務、第12条の4第2項の規定による指示(緊急の必要がある場合におけるものに限る。)に関する事務、第15条第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第4項及び第5項に規定する事務並びに第30条の11第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第3項及び第4項に規定する事務を警視総監又は道府県警察本部長に行わせることができる。
2・3 (略)
公安委員会の事務の委任)
第42条  公安委員会は、仮の命令に関する事務、第12条の4第2項の規定による指示(緊急の必要がある場合におけるものに限る。)に関する事務並びに第15条第1項の規定に係る仮の命令に係る同条第3項及び第4項に規定する事務を警視総監又は道府県警察本部長に行わせることができる。
2・3 (略)
平成24年法律第53号がこのようなより合理的な改正方法を採らなかったのは、この改正が引用している条項の移動に伴う改正と新たに追加された事務を委任する改正であることから、その改正内容を忠実に表そうという理由からであるのであれば、それは一理ある考え方である。しかし、上記の程度の改正であれば、より合理的な改め文としてもよかったのではないかと個人的には感じる。