一括法で委任された事項に関する雑感(3)〜基準該当通所支援

社会福祉制度において契約的な考え方を取り入れているもののサービスに、基準該当サービスというものがある。例えば介護保険法においては、保険給付の対象となる指定事業者としてのサービスの本来の要件の一部は満たしていないが、一定の水準を満たすサービスの提供を行うものについて、市町村の判断で保険給付の対象とすることができるものである。
同様に児童福祉法においても、基準該当通所支援として制度化されている。根拠規定は、次の第21条の5の4第1項第2号の規定である。

第21条の5の4 市町村は、次に掲げる場合において、必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該指定通所支援又は第2号に規定する基準該当通所支援(第21条の5の7第7項に規定する支給量の範囲内のものに限る。)に要した費用(通所特定費用を除く。)について、特例障害児通所給付費を支給することができる。
(1)  (略)
(2) 通所給付決定保護者が、指定通所支援以外の障害児通所支援(第21条の5の18第1項の都道府県の条例で定める基準又は同条第2項の都道府県の条例で定める指定通所支援の事業の設備及び運営に関する基準に定める事項のうち都道府県の条例で定めるものを満たすと認められる事業を行う事業所により行われるものに限る。以下「基準該当通所支援」という。)を受けたとき。
(3)  (略)
(2項以下略)

基準該当通所支援の性格が上記のようなものであるので、その事業の基準を都道府県の条例で定めるのもいかがと思うのだが、その部分(太字の部分)は、第1次一括法において「厚生労働省令」とされていたものが改められたものであり、施行日は平成24年4月1日である。
その後、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律(平成24年法律第51号)」による児童福祉法の改正により、同法第21条の5の4に第2項として次の規定が追加された。

都道府県が前項第2号の条例を定めるに当たつては、第1号から第3号までに掲げる事項については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとし、第4号に掲げる事項については厚生労働省令で定める基準を標準として定めるものとし、その他の事項については厚生労働省令で定める基準を参酌するものとする。
(1) 基準該当通所支援に従事する従業者及びその員数
(2) 基準該当通所支援の事業に係る居室の床面積その他基準該当通所支援の事業の設備に関する事項であつて障害児の健全な発達に密接に関連するものとして厚生労働省令で定めるもの
(3) 基準該当通所支援の事業の運営に関する事項であつて、障害児の保護者のサービスの適切な利用の確保、障害児の安全の確保及び秘密の保持に密接に関連するものとして厚生労働省令で定めるもの
(4) 基準該当通所支援の事業に係る利用定員

この改正に係る施行日は、平成25年4月1日であり、厚生労働省の基準は、ようやく平成24年9月13日付けの官報において公布された厚生労働省令第126号で定められることになった。
ちなみに、障害児に対する通所支援の制度は、従来は障害者自立支援法に障害の種別ごとに規定されていたものを、障害児支援の強化を図るため「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律(平成22年法律第71号)」により一元化して児童福祉法に規定されたものである。
したがって、従来は、障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービス事業の基準に係る厚生労働省令で定められていたが、平成24年3月28日に公布された厚生労働省令第40号で削除され同年4月1日から施行されたが、その際次のような経過規定を置いている。

障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準の一部改正に伴う経過措置)
第5条 この省令の施行の日から起算して1年を超えない期間内において、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(平成23年法律第37号)第13条の規定による改正後の児童福祉法第21条の5の4第1項第2号に規定する都道府県の条例が制定施行されるまでの間は、この省令の施行の際現に第23条の規定による改正前の障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準第5章第5節に規定する基準該当障害福祉サービスに関する基準を満たしている事業所については、当該基準を満たしていることをもって、児童福祉法に基づく指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)第2章に規定する児童発達支援に係る基準及び同令第4章に規定する放課後等デイサービスに係る基準を満たしているものとみなすことができる。

第1次一括法には経過規定に係る委任規定は置かれていないので、この規定の法律上の根拠もよく分からない。したがって、この規定がないものと考えれば、基準該当通所支援の基準は、省令の基準がない状態で平成24年4月1日までに策定し、平成24年9月13日に公布された省令の基準を考慮して平成25年4月1日までに適宜見直す必要があることになる。
諸々の事情があるとはいえ、基準該当通所支援の制度施行の時期が適切でないのは明らかであろう。