バランスの悪い経過規定の例〜動物愛護法改正関係

以前(2013年3月9日付け記事「規制を行う場合の規定例〜動物愛護法の例」)取り上げた「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下「法」という。)を改正する平成24年法律第79号(以下「改正法」という。)では、次のような改正がなされている。

  • 改正前の動物取扱業を第1種動物取扱業とする(法第10条第1項)。
  • 第1種動物取扱業のうち犬猫等販売業を営もうとする場合には、その登録の申請書に所定の事項を記載しなければならないこととし(法第10条第3項)、第1種動物取扱業者が新たに犬猫等販売業を営もうとする場合には、届出をすることとする(法第14条第1項)。

上記の改正に伴い、改正法では、次の経過規定が置かれている。

動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第79号)
   附 則
(経過措置)
第3条 この法律の施行の際現にこの法律による改正前の動物の愛護及び管理に関する法律(以下「旧法」という。)第10条第1項の登録を受けている者は、当該登録に係る業務の範囲内において、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)に新法第10条第1項の登録を受けたものとみなす。
2 前項の規定により新法第10条第1項の登録を受けたものとみなされる者のうちこの法律の施行の際現に同条第3項に規定する犬猫等販売業を営んでいる者は、施行日から起算して三月以内に、環境省令で定めるところにより、同項各号に掲げる事項を記載した書類を都道府県知事(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、その長とする。附則第8条第1項において同じ。)に届け出なければならない。
3 前項の規定による届出は、新法第14条第1項の規定によりされたものとみなして、同条第4項の規定を適用する。
4 第2項の規定に違反した者は、新法第14条第1項の規定に違反した者とみなして、新法第19条第1項第6号の規定を適用する。
第9条 附則第3条第2項又は前条第1項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、30万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
第10条 この法律の施行前に旧法又はこれに基づく命令の規定によりした処分、手続その他の行為は、この附則に別段の定めがあるものを除き、新法又はこれに基づく命令の相当の規定によりした処分、手続その他の行為とみなす。
第12条 附則第2条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。

この経過規定で、改正前の法第10条第1項の登録を改正後の法第10条第1項の登録とみなしている(改正法附則第3条第1項)。ただし、そのうち犬猫販売業を営んでいる者は所定の届出を行うこととし(改正法附則第3条第2項)、届出義務違反には罰則を科すこととしている(改正法附則第9条)。
ところで、改正法を受けた政令(以下「改正政令」という。)に、次のような経過規定がある。

動物の愛護及び管理に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第232号)
   附 則
(犬猫等販売業に関する経過措置)
第2条 改正法の施行前にした改正法による改正前の動物の愛護及び管理に関する法律(次条第1項において「旧法」という。)第10条第2項の規定による登録の申請に基づき改正法の施行後に改正法による改正後の動物の愛護及び管理に関する法律(以下「新法」という。)第10条第1項の登録を受けた者(同条第3項に規定する犬猫等販売業を営もうとする者として当該登録を受けた者に限る。)は、当該登録の日から起算して3月以内に、環境省令で定めるところにより、同条第3項各号に掲げる事項を記載した書類を都道府県知事(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、その長。次条第3項において同じ。)に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出は、新法第14条第1項の規定によりされたものとみなして、同条第4項の規定を適用する。
3 第1項の規定に違反した者は、新法第14条第1項の規定に違反した者とみなして、新法第19条第1項第6号の規定を適用する。

これは、改正法の施行前に登録の申請がなされていたが、登録が改正法の施行後になってしまった場合には、改正法附則第3条第2項の適用がないため、この規定に相当する経過規定となっている。
このような場合はレアケースであろうから、政令委任することはありだとしても、改正法附則第3条第2項違反については罰則があるのに対し(改正法附則第9条)、改正法は罰則に関する経過措置まで委任していないため*1、改正政令附則第2条第1項の届出義務違反に対する罰則までは規定していない。結果として、バランスの悪いことになってしまっている*2

*1:罰則も含めて委任する場合は、「この法律に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める」といった規定が置かれる。

*2:事実かどうかは分からないが、改正法で規定し忘れたため、政令で規定したとの話も聞こえてくる。なお、改正法は議員立法(衆法)である。