自治体の組織と条例(上)

先に「いわゆる私的諮問機関に関する判例について」という記事(2013年7月20日付け7月27日付け8月3日付け8月10日付け及び8月17日付け記事)で、要綱等で設置されたいわゆる私的諮問機関が条例で設置しなければならない附属機関に当たるとされた判例を取り上げた。両者の違いは、実際には明確なものではなく、運用によって如何様にでもできる程度のもである。それは、組織についてどのようなものが条例事項とされているのか、理論的な説明ができないということによるのではないかと感じている。
自治体の組織と条例の問題については、以前「自治体の組織」という記事(下記参考参照)の中で触れたことがあるが、今回はその記事を整理するという意味も含めて、改めて取り上げることとしたい。
まず、組織についてどのような事項が条例事項とされるかについてだが、これは、国の組織についてどのような事項が法律事項とされているかということとパラレルに考えることができるだろう。この点について、藤田宙靖『行政組織法』(P60〜)は、次の2つの考え方があるとする。

  1. 私人の権利義務に直接の影響を及ぼすような権限を有する行政機関の設置・廃止については、必ず法律の定めを必要とするが、それ以外の機関については、既存の法律の定めに反するのでない限り、行政権の自由に委ねられる。
  2. 行政組織のあり方そのものに対する民主的なコントロールという見地から法律による規律の必要の有無は考えられるべきである。

そして、具体的には「基本的な部分については法律がまず定め、それ以外の部分については広く行政権に自己組織権能を認めるということにならざるを得ないのである」とし、「我が国現行法の解釈としては、少なくとも省のあり方については、法律で定めなければならない、というのが、一般的な理解であると言え」るとしている。
では、具体的に条例事項とされている行政機関であるが、地方自治法を根拠とするものは次のとおりである*1

上記のうち、長の直近下位の内部組織と附属機関については、2の考え方によるものと言え、保健所、警察署その他の行政機関については、1の考え方によるものと言えるだろう。地方事務所等についても、一応1の考え方によるものと言えるのだろうが、実際には地方事務所等が扱う事務は法律上明記されているわけではないので、その全てが私人の権利義務に影響を及ぼすものということはできない。そして、労政事務所については、何とも言えない。
以上によると、はっきりはしないのだが、附属機関も含めた本庁と出先機関という区分けをすると、概ねの傾向として、前者が2、後者が1の考え方によっているということができる。
しかし、1の考え方と2の考え方は、それぞれ相容れないものではない。そして、1の考え方で条例で設置すべきと言われれば納得できるのだが、2の考え方では条例で設置すべきとする積極的な意味はないと言えるだろう(2007年4月21日付け記事「自治体の組織(1)〜はじめに」参照)。
(参考)組織に関する記事一覧

*1:条例設置される公の施設や教育機関が行政組織としての側面を持つこともあるのだが(2007年5月4日付け記事「自治体の組織(4)〜各執行機関(特に長)の組織・?出先機関(その1)」参照)、これらが条例で定めることとされているのは行政組織としての側面を捉えたものではないと思われるので、ここで取り上げることはしない。